〜 紫の薬 〜




HAPPY BIRTHDAY。銀次。これが俺からの誕生日プレゼントだ。」


そう言って、蛮ちゃんは紫色のカプセルを飲み込んだ。

俺が悩んだ末に選んだそれは、どんな効果があるか、飲んでみなければわからないマリーアさん特製の魔法の薬。


「…んっ。ぐぅ……ぁ。」


変化はすぐに現れた。

呻いた後で、蛮ちゃんは蹲くまった……んだけど、ケロリと起き上がってしまったのだ。


「蛮ちゃん。何ともないの?」

「別に、何も変わらねぇなぁ。」

「ええ?こう『体が熱い』とか、『俺とHしたくて堪らない』とかないの!」

「てめぇ!そんな薬だと思ってやがっ…」


ふいに言葉が途切れ、蛮ちゃんが胸を押さえ出した。


まさか、あの薬は失敗だったんじゃ?

不安が全身から血の気を奪ってく。


「蛮ちゃん。大丈夫?」


顔を覗き込んだ途端、世界が一回転した。


「え?」


俺は押し倒されていた。

俺の上に跨がった蛮ちゃんは、服を脱がし始めてた。


「ど、どういう事?」

「うるせぇな。急にしたくなったんだよ。」


赤い舌がなまめかしく、唇をなぞる。



何だか俺は、唐突にわかった。


あの薬って『素直になる薬』だったんだ。




「…ぁ……んっ……ふ、ぁ………あぁ。」

「蛮ちゃん。凄い…イイよっ。」


俺を押し倒した姿勢のまま、秘部にはしっかり俺をくわえている。

両手をついて腰を奮う姿は、俺が襲われてる気さえした。

実際、受け入れてるのは蛮ちゃんでも、襲われてるのは俺に間違いないのかもしれない。


「んっ……ぁ…あっ……蛮ちゃんっ。」


イタズラに蛮ちゃんが俺の乳首を噛む。

舌先でくすぐるように撫でられ、ゾクゾクと腰が疼いた。

気持ちよくて、頭が甘く痺れてる。

けど、やられっぱなしじゃ嫌だから、下から突き上げてやると、形良い顎が反れた。


「あぁ……イっ…ぁ……んぁ…。」

「蛮ちゃん。イイの?」

「イイっ……ナカに銀次のが…ぁ……食い、込んで……」


桜色の頬で素直に答える蛮ちゃん。

興奮が背筋を駆けて行ってゾクゾクした。



あの薬が『素直になる薬』なら…

こんな風に答えてくれるなら…


ずっと聞きたかったあの事も答えてくれるだろうか?

「ねぇ。蛮ちゃん…。」


心地よく締め上げて、一層絡み付く粘膜を巻き添えながら尋ねる。


「んっ……ぁ、んだよっ……ぁ。」

「俺の何処が好き?」


見開かれた紫の瞳が、驚きに色を濃くしていく。

何か言いかけて開いた口は、キュッと閉じられ、固く唇が結ばれた。

零れてしまう大事な物を押し留めているように。


「ねぇ?答えてくれないの?」

「うわぁ……っ……あっ………つぅ……。」


仰向けに寝ていた俺は起きあがり、蛮ちゃんを逆に押し倒す格好になった。

動いた拍子に肉壁を押し上げて、蛮ちゃんは苦しげに眉を寄せる。


「何処がイイのかは答えられても、俺の何処が好きなのかは言えないんだ?」


蛮ちゃんは、更に口を固く結んだ。

それが妙に悔しくなって、俺はベッドと壁の間に隠していた袋からオモチャを取りだした。

それは、大小の丸い玉が交互に連なった、所謂アナルパールというヤツだ。


「お前っ…何する気だ?」


オモチャなんか持ち出した俺を、蛮ちゃんは不安そうな眼差しで見つめてくる。

俺は、それに後ろ暗い思いを込めて微笑み返した。


「やっ、やめ、ろ………あぁ……ぁ…。」


まだ、俺のをくわえたままの秘部を押し広げて、やっと出来た小さな隙間にアナルパールの先端を押し込めた。


「あぁ……くっ……無理っ……入ん…なっ……ひぃ…ぁ。」


決して大きくはない粒を一つ一つ飲み込む度に、押し込めた入口が引き裂かれてしまうんじゃないかと思った。

肩胛骨の辺りだけシーツに触れているような不安定な体勢で、蛮ちゃんは思うように体を動かす事も出来ず、拳が真っ白に成る程、強くシーツを握り締めている。

見開かれた瞳からは幾筋もの涙が伝い、喘ぎ続ける口元からも唾液が糸を引いた。


「はっ……あ、ぁ……ぃ………あぁ……あっ…。」

「ほら、全部入っちゃったよ?」


わずか数粒残して、純白の玉は蛮ちゃんのナカに収まってしまった。ナカはもう、動かす隙間もないくらいに詰まっていて、苦しいくらいだった。

けれど、俺は腰を揺り動かす。ギチギチと肉を引きつらせながら。


「あっ………ひっ……いっ…ぁ………あっ。」


抜き差しされる動きにつられて、アナルパールの純白の玉も出たり入ったりする。

肉壁を押し上げながら飛び出す瞬間が堪らないのか、蛮ちゃんの下半身はビクビクと波立った。


「嫌がってた割に気持ちよさそうだね。」

「すご……ぃ、イイっ……ぁ…壊れ、そう……っ。」

「エッチな蛮ちゃん。そういう事は言うんだから。」


回し入れていた腰付きを、突き破るくらいの激しい動きに変える。

ゴツゴツとしたオモチャは、内部で俺の性器も刺激して、先端を奥へと食い込ませる程に大きく膨らんでいた。


「やぁ……あっ………ぁ…いっ……あぁ……あー。」

「蛮ちゃん。言ってよ。俺の何処が好き?」

「…ぁ……あっ……あ、あぁ……っ。」


快楽に支配されてしまった蛮ちゃんに、俺の声は届いてないみたいだった。



本当はわかってる。

何で、蛮ちゃんが答えないのか。


薬の力で聞き出した答えなんて、

無意味だって言いたいんだ。


それに、言葉に出さなくったって、蛮ちゃんが俺の事を思っている事は十分知っている。



だけど、今日は誕生日。

いつもと違う『特別な何か』を願ってもいいよね?



「あっ、ぁ……銀次っ……イっちゃう……で、るっ……。」

「蛮ちゃん。ばんちゃんっ…ばんちゃ……。」

「あああぁ……っ。」


ハラハラと蛮ちゃんの先端から零れた液は、埋め込んだ純白の玉よりも綺麗だと思った。

激しい締め付けに、俺も熱い飛沫を搾り取られて、一つ残らず注ぎ込む。


「とうとう…言ってくれなかったね。」


意識を手放した思い人にそっと囁く。

疲労の色を濃くしながらも、何処か幸せそうで。

酷い事をしてしまった罪悪感で、俺の胸が痛む。



愛しさを込めて蛮ちゃんの体を拭き取って、俺は台所に向かった。

ジュースを飲もうと、冷蔵庫を開けた瞬間、時間が止まってしまった気がした。


「蛮ちゃん……。」


飲物くらいしか入っていない殺風景な冷蔵庫の真ん中に、赤いリボンのかかった真っ白な箱があった。

聞き覚えのある店の名前は、俺が前に食べたいって言っていたケーキ店の名前だった。


「だって、蛮ちゃん…。女子供ばっかりで、恥ずかしくて入れないって言ってたじゃん。」


箱を取り出して開けて見ると、生クリームが塗られたスポンジケーキの上に、真っ赤な苺がびっしり敷き詰められたバースデーケーキが入っていた。

そして、中央のチョコレートのプレートには『銀次 誕生日おめでとう』の文字。


熱いものが込み上げてきて、溢れたそれは頬を伝って落ちた。



どんな顔をして買ったんだろう?

店員さんに何て言ってプレートを頼んだんだろう?


本当は入りたくないケーキ屋に入って、

好きじゃないケーキを選んで、



それも全部全部、俺のため。


俺が誕生日だから。

『特別な何か』を願っていたから。



こんなにも俺の事を思ってくれていた。

それなのに、俺は、俺は…。


「俺…、何てバカな事しちゃったんだろう。」

「本当にそうだな。」

「ば、蛮ちゃん!」


何時の間に起きていたのだろう。

冷蔵庫の前に蹲る俺を、ベッドの中から頬杖をついて眺めていた。


「ご、ごめ…俺、蛮ちゃんに酷いことして…。」

「ばーか。こういう時は、『ごめん』じゃねぇだろ?」


何もかもを許してしまう優しい笑み。

俺はすぐに蛮ちゃんの心を悟り、涙を拭った。


「蛮ちゃん。ありがとう。だーい好き。」


ベッドの上にダイブして、蛮ちゃんを力強く抱き締める。


「…って。いきなり、飛び込むんじゃねぇ。」

「だって、だって……。うわぁ。凄い嬉しいよ。蛮ちゃん。ありがとう。本当にありがとう。」

「ったく、お前は…。調子いいっつうか、バカっつうか。」

「あうぅ。そんなに言わないでよ。」

「でも、まぁ…そこが……。」





さり気なく零れた台詞。


俺の聞き間違いじゃなければいいな。





END



銀次誕生日とサイト4万打記念としてフリーだった為、頂いて参りました。緑の薬と迷ったんですが、最後のケーキでの遣り取りが気に入ったので、こっちにしました。なんか、最後はほのぼのバカップルしてませんか?内容はちょっと鬼畜入っている気がしなくもないんですが‥‥。素直な蛮ちゃんって珍しいし、ね。お子様系はウチのサイトは多いので折角なので傾向の違うものを、とね。

goto様、素敵な話をフリーにしていただいてありがとうございます。最後に、遅くなりましたが、4万HITおめでとうございます。これからも精力的に更新してください。応援してます! 焔




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