暑い熱い雨の日
「毎日毎日、ダラダラ降りやがって…、」
スバルの中、フロントガラスを伝い落ちる水滴を睨み付けながら、蛮が鬱陶しそうに呟く。 梅雨入りしたばかりの裏新宿の空は常に曇りがちで、雨も降ったり止んだりの繰り返し。いくら恵みの雨と言えど、こんなにもダラダラと降られては文句の一つも言いたくなるのは当然だろう。
「……だからってさぁ、そんな格好でいるのやめてよ。」
助手席から呆れ半分な声が掛かる。 少し頬を赤らめながら銀次が言う『そんな格好』とは。
「うっせー。このクソ厚ィ中、服なんか着てられっかよ。」
全裸まではいかないが、タンクトップに下着と言う、限りなく全裸に近い格好だった。 しかも長い両足は行儀悪くハンドルの上で組まれていて、太ももから尻までのラインを際どく演出している。何となく目のやり場に困りながらも銀次は、抗議するのを止めない。
「てゆーか、外から丸見えだよ。ズボンくらい履いたら?」 「こんな雨の中、誰も通らねぇっつーの。それに見られたってどうってことねーしよ。」
ホンキートンクから拝借した団扇で仰ぎながら、面倒臭そうに蛮が言う。 その蛮の言葉にカチンと来てしまった辺り、銀次もこの蒸し暑さでイライラしていたに違いない。
「俺は、どうってことあるよ。」
少し低い、不機嫌さを含んだ声。発声源をチラリと見てみると、口をへの字に曲げて頬を膨らませて、まるで子供のように怒っている銀次が見えた。 声と表情のギャップに思わず吹き出してしまいそうになるを必死に堪えて、蛮は無理難題を吹っ掛けることにした。
「じゃあよ、俺様を涼しくさせられたら服着てやってもいいぜ?」
悪戯っぽく笑んで銀次の反応を待つ。 どうせトリ頭の銀次では大したアイデアなど出ずに困り果てて終了、という所だろう。そのアタフタする姿を見てこの蒸し暑さで堪ったストレスを発散させようと考えたのだ。 しかし、蛮の予想に反して銀次は一瞬キョトンとした後に、その表情のまま尋ねた。
「それって、暑いのが気にならなくなればいいってこと?」 「あぁ、それでもいいぜ。」
蛮の答えを聞いて、銀次はもともと赤かった頬を更に赤くして僅かに逡巡した。その様子を訝しげに見ていると、銀次が決心したように見据えてくる。
「分かった。俺、頑張るよ!」
意気込みを発表したと同時に、蛮のタンクトップの裾を勢い良く捲り上げた。
「はっ…?!」
予想外の行動に混乱する蛮。それ余所に、銀次は露になった胸の白さに息を呑みつつ、蛮を涼しくさせる行為を進めていく。
「っひゃ…!ぁ、ぎんっ…、」
しっとりと汗ばむ肌をぬめった舌が這う。突然の刺激に思わず裏返った甘い声。いつもより高いそれに煽られて銀次は執拗にソコを攻めだす。
「っあ、このっ…ばか…っ……暑ィって…んっ!」
突起を甘噛みされて快感に大きく身体が震えた。 唾液に濡れてピンと尖った突起を満足そうに見て銀次は一旦顔を上げ、蛮に向き直る。
「うん、だから暑いのなんか忘れちゃうくらいに気持ち良くしてあげるね。」
無邪気な子供のように笑った顔で言われて、その台詞は更に卑猥さを帯びる。 ドキ、と胸を高鳴らせてしまったが最後、その一瞬の隙を突いて銀次は蛮の下半身を愛撫しだした。
「ちょっ、や…ッ、余計に、暑くッ……っな…だろッ!」 「だって蛮ちゃん、いつまでもそんな格好してるから…。俺、もう限界だよ。」
結局はテメーがヤりてぇだけだろ!!
そう突っ込んでやりたかったが、銀次の手によって高められていく熱の所為で唇を割って出てくるのは嬌声のみ。
ジメジメとしたこの暑さが原因でここ数日間、二人は身体を重ねていなかった。と言うのも、銀次からお誘いが掛かる度に、蛮が頑なに拒否していたのが原因なのだが。
そんな経緯もあって、久方ぶりの愛しい人の体温を感じて熱を煽られては拒む術などもうない。 されるがままに流されて、欲の赴くままに身体を開いていく。
「ァ…あッ、ぎん…っ、もぅ……ひっ…ィ!!」
性急に追い立てられて、早くも達してしまった蛮に銀次が小さく笑う。
「クス…早かったね。」
耳に直接吹き込まれて、ぞくりと肌が粟立つ。羞恥を煽るそれすら官能を呼び覚ます。
「蛮ちゃん…」
何時の間にか倒されていたシートの上に寝かされ、銀次が覆いかぶさってくる。何度も角度を変えて口付け、差し入れた舌で熱い口内を貪る。そうして漸く唇を解放した時には、蛮はハァハァと荒い息を吐いて虚ろな目で見上げていた。 その様子に煽られる形で銀次は、蛮の精液に濡れた指を秘められた蕾に触れさせる。
「ぁ…っ、」
するとソコはもう待ちきれない、という風にヒクヒクと喘ぎ、銀次の指に吸い付いてきた。その何ともいやらしい光景に堪らず熱い息を吐いた。
「っ…ん……はや、く…」
入り口で止まっている指に早くも焦れた蛮が催促しだす。自ら腰を動かし、指に蕾を擦り付けてオネダリした。
「蛮ちゃん、ホント…やらしすぎ…っ」 「っあ、あぁっ…んぅっ、」
待ち侘びた刺激に歓喜して身体をビクビクと跳ねさせながら銀次の指を締め付ける。久しぶりに入り込んだソコは狭く、熱く濡れていた。
「んぁっ…ア…ッ…!」
ぬめりを塗り付けるように内壁を撫で、ぐるりと円を描いては奥へと押し進める。その度に蛮は身を捩り、切なく喘いだ。
「ァ…っ、ひっ…ぎんっ、もっ……欲し…!」 「っえ、」
二本目の指をやっと飲み込ませた時、蛮から更に催促され銀次は驚き目を見張った。
「ぎ…じっ、ぁ…早くっ……シろ…ッて、」 「で、でも…っ」
まだしっかりと慣らしてもいないのに、指とはまた違った質量の銀次自身を入れてしまっては蛮が傷付く。 このまま流されてしまいそうなのを必死で我慢する。
「ダメだよ。もう少し、我慢して…、」 「や…っ、も、待て、ね…欲しっ…ぃ、早くっ…!」
情欲に瞳を濡らして甘く上がる嬌声。腰を揺らして、銜え込んだ指を締め付けてくる淫らなソコ。 全身を使っての蛮の誘惑に銀次の理性が保つはずもなく。
「っあぁ…!ん…ア……ッ」
乱暴に指を抜き去り、蛮の痴態に煽られ太く育ったモノを突き付ける。軽く前のめりに体重を掛けると、濡れたソコは自らそれを飲み込もうと蠢き始める。
「アアァ…!いっ、ぁ…ッ、」
歓喜にも聞こえる嬌声の中に苦痛が混じる。時間を掛けて慣らしていない上に許容を越える質量が侵入してきたのだから、無理もない。 そうは分かっているが、銀次も蛮にあれだけ煽られて、途中で止まるということはできなかった。
「ぁ、くっ…ばん、ちゃん…っ、」
ナカの狭さと熱さに呻きながら、最奥まで押し込んだ。
「っあ、ぁ…っ、はぁっ…は…!」
蛮は圧迫感に喘ぎながら、銀次の大きさを馴染ませる為、大きく呼吸を繰り返す。
「蛮ちゃん…っ」 「っああ…ッ!ぎん、やっ…待っ、ん…まだ…ァ…ッ」
銀次がじっとしていられる筈もなく、蛮の制止も無視して腰を動かしだす。蛮は尚も制止を求めて、銀次の肩を両手で押し返し、嫌々するように首を横に振った。
「蛮ちゃん、」
普段見れない子供のようなその仕草に銀次は堪らない気持ちになる。それはより銀次を煽る結果となってしまい、直ぐ様欲に変換されて腰の律動を激しいものへと変えていく。
「あっ、ア、あ…!ぎん、っ…ぎ、じっ……ぁッ、」 「蛮ちゃん、好き…っ、大好き、だよっ、」
何度も何度も敏感な箇所を抉られて、痛みすらも快感に刷り替わっていく。譫言のようにお互いの名前を呼び合い、熱く火照った身体を抱き締め合う。
「あぁ……っ!だ、め…ぇっ……もうっ…!」 「うっ、蛮、ちゃんっ、蛮ちゃん…っ!」
限界を訴えた蛮が、銀次の手の平に二度目の精を吐き出す。その瞬間のキツイ締め付けに導かれて銀次も蛮のナカで絶頂を迎えた。
「っ、はぁ…はー……ッ」 「ぁ、っは…はぁっ、はっ……ふ、」
荒い息遣いが狭い車内に充満する。少し落ち着いてきたところで銀次は、ずるり、とナカから自身を抜き、蛮へと口付ける。
「ん、ふぁ…っ…ん、」
苦しげな吐息さえも奪うように舌を絡めて吸い付く。
「はぁ……っ、」 「ね、蛮ちゃん…暑いの、気にならなかったでしょ?」
濡れた唇を舌で拭って、虚ろな瞳の蛮を覗き込んで言った。
「……ばか。余計に熱くなったっつーの…。」
余韻に浸っていた意識を無理矢理に戻して、悪態を付く。それでも銀次の笑顔は変わらない。
「今はそーかもしんないけど、シてる時は気にならなかったでしょ?」
確かに、シてる間は銀次に夢中になりすぎていて暑いだなんて気にしている暇もなかった。
「………まぁ、な。」
悔しいが素直に頷く。 しかしそれは次の情事を始める為の合図になってしまった。
「良かったvじゃぁ、もっと気にならなくしてあげるね!!」 「は、」
足を抱え直して、先程の精液が溢れているソコにまだ硬度を失っていないモノを突き付ける。その熱い塊に蛮は身体をビクリと震わせた。
「ちょ、待てっ…あっ…!」
濡れたソコはすんなりと銀次を受け入れ、美味しそうに銜え込む。
「あ、はァ…ぁっ……あぁんっ…ッ!」 「蛮ちゃん、大好き…っ」
久しぶりの情事は蛮が意識を飛ばすまで続けられた。
今年の夏の暑さ対策も、この行為で決まりのようだ。
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