ほら、またカナリアが鳴いてるよ……












『ねぇ、蛮ちゃん』

『あ?』

『カナリアって知ってる?』

『カナリア…?鳥のカナリアか?』

『うん。そうだよ。どんな鳥なのか分かる?』

『どんなって…、そうだなぁ…、可愛くてキレイな鳥だよなぁ。姿も声も美しい…かな。んで、そのカナリアがどうしたんだ?』

『ん、別に。前にね、無限城で見たの思い出しただけ…』


と俺は答えた。


『ふーん、無限城でねぇ…、それって、どっかから逃げて来たんだろうな』

『逃げる…?』

『そっ。まぁ、鳥だからな。狭いとこにはいたくなかったんだろうよ』


と蛮ちゃんは言った。



『鳥って、狭いとこ嫌なの…』

『嫌だろ、普通は。もっと広い空を飛びたいに決まってんだろ』


と蛮ちゃんは言った。

けど、俺はそうは思わない。

籠の中で暮らす方が良いに決まっている。

危険な目にも遭わないから…。

だから、俺は……決めたんだ…。

カナリアを外に出さないと……。


『ねぇ、蛮ちゃん…』

『ん?』

『何処にも行かないよね…』

『えっ?あっ、……銀次に言ってなかっけか…』

『何を…』

『ん。実はな、今日の夜から家空けるんだわ…』

『な…何で…』

『何でって、まぁ、ババァの手伝いにな…。で、その間な…』


と蛮ちゃんが言い掛けていたが、俺は反射的に蛮ちゃんの腕を掴んでいた。

『な、何し…っ…うぁぁ……ぅ…』


俺は蛮ちゃんに電撃を目一杯流した。

そして、蛮ちゃんはピクリとも動かない。



『籠から逃げようとするからだよ。絶対に逃がさないからね』


気を失っている蛮ちゃんに黒い笑みを浮かべて言った。

昔、無限城でみたカナリアは、路地裏で力尽きていた。

あんな風にはさせない。

だから…、



『蛮ちゃんを隠すんだ。いや……』


カゴノナカニトジコメルンダ…。

ダレニモミセナイ…、

ダレニモフレサセナイ…、

オレダケノカナリア…。



『ずっと一緒だよ…、ズット…』


また今日も…、


カナリアガナイテイル…。

オレダケノタメニ…。





おわり




katty様、1000hitoverおめでとうございます。早いものですねぇ。
まだまだお互い、銀蛮で頑張りましょう!
真っ黒銀次のフリーSS、楽しませて頂きました。焔。

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