「……」
「…蛮ちゃん…」
あれから明らかに不機嫌モード全開の蛮ちゃん。
理由はわかっている。
だけどそれは…
「しょうがない事…じゃん」
落ち込みながらボソッと呟いてみる。
そう、しょうがない。
こればっかりは不可コーリョクって事だ、よね。
コンビを組んでやっと1年。
少年だった彼らは青年へと変化しつつある。
精神的にも、そして肉体的にも。
今は季節の変わり目。
学生はもうブレザーではなくワイシャツになっている。
奪還屋の二人はHONKY
TONKの二階にいた。
押入れの奥から夏物の衣装が入っているケースを引っ張り出している。
「あと仕舞う物ねぇか?」
蛮は冬物の衣類を片付け、銀次は夏物の衣類を出している。
「あ、コレ初めて外で買った服♪」
と、思い出に浸りながら。
そんな中…。
「あれ?このズボン短い…?」
無限城時代はちょうどよかったはずのズボン。
って、ことはやっぱり…。
「蛮ちゃん!!俺、身長伸びてる!!」
「あ?」
「なんか去年の上着もキツイみたいだから、筋肉もついたのかも♪」
蛮は薄々気付いていた。
だが、そんなこと認めたくない。
自分より身長が高くなっていて、筋肉がついているだなんて…。
意地でも認めない。
「何だ、銀次。太ったのか?」
そうそう、筋肉なんかじゃない。
と、言い聞かせる自分が悲しかったりする。
「違うもん、ほら」
固いし、と自らの腕を触っている。
やはりそれは、太った痩せたなどと言う問題ではなかった。
「見て見て♪」
なんて、立ち上がってボディービルダーのポーズなんかしている。
「身長伸びたみたいだし、筋肉も付いて上着もちょっときついし」
改めて銀次と蛮の身長を見てみれば確かに銀次の方が高いし、体もしっかりしている。
………いや、気のせいだ。
そう思い込む蛮。
「無限城出た時は同じくらいだったのにねぇ♪」
なんて、嬉しそうに言う銀次。
機嫌が下降していく蛮なんて気付かず、更に追い討ちをかける。
「大丈夫♪蛮ちゃんもこれから伸びるって」
ね、なんて上機嫌。
「……」
「だから……………蛮ちゃん?」
「なぁ、銀次」
立ち上がり、銀次前に立つ。
やっぱり蛮ちゃんの方が低いかも、なんて感じる前にわかったのは蛮の顔に浮かんでいるのは明らかな、怒り。
「な、何?…蛮、ちゃ」
「そんなに身長が伸びたってのが嬉しいか?」
嬉しいけど、今は嬉しくない。
そんな複雑な銀次心。
「てめぇが俺様より高けぇなんて絶対許さねぇっ!!縮めてやる!!」
「蛮ちゃん!!踏まないでっ!!潰れるっ!!」
その後、波児が止めに来るまでタレた銀次を踏みつける蛮がいた。
後日
「波児…その…」
「何だよ、蛮」
HONKY
TONKには今、波児と蛮の二人のみ。
銀次は買い出しに出た夏実の荷物持ちのため、今はいない。
蛮は波児に意を決した顔で言った。
「………………牛乳とか、あるか?」
「?ああ、有るが…?」
その日から牛乳をHONKY
TONKの奥でコッソリ飲む蛮がいたとか。
<あとがき>
先ず、焔様遅くなって申し訳ございませんっ!!
更に、春らしい、ほのぼのな日常…とは随分かけ離れてしまった感が…ううっ、すみません(土下座っ)
銀次が踏まれていては、「日常」であっても(笑)、「ほのぼの」ではありませんよね(汗)
リクありがとうございました(^_^)
《コメント》
可愛いお話をありがとうございます。
衣替えか〜、焔は殆どしたことないなぁ。冬は夏のものを一部重ね着するもんで、夏物出しっぱなし(とはいっても、普通夏物って言わないかもね、長袖Tシャツとかは)
背を伸ばそうと牛乳をこっそり飲む蛮ちゃん。波児さんの口元にはきっと苦笑が浮んでいる事でしょう。
受験勉強で大変な時期に、ありがとうございました〜v
来年には! いい結果が出てる事をお祈りします〜! (焔)
|