「これがその時の写真だよ。ね、可愛いでしょ」
携帯のメモリーから写して保存してあった蛮ちゃんの写真を呼び出して覗き込む二人に見せた。
「うわぁ、ほんとに可愛い! これ、本当に蛮さんなんですか?」
「ちっちゃくって、可愛いですぅ」
夏実ちゃんとレナちゃんは大絶賛だ。女の子ってさ、こういう『妖精』って好きなんだよね。
ちなみに写真には籐の籠にクッションを詰めて作った蛮ちゃん用のベッドからこっちをじっと見ている「魂」の蛮ちゃんっだ。
布団代わりにと与えられたレースの縁取りつきのハンカチを巻きつけるようにした状態の姿は掛け値なしで可愛い。
背中の羽根で飛んでいる写真もある。眠そうな顔で目を擦っている写真、にっこりと笑ってトーストを抱え込んでかじっている写真もある。
2人はオレの手から携帯を奪うようにとると、きゃいきゃいとメモリーの中の写真に見入っていた。
「ちぃーす」
「あ、蛮ちゃん、おかえり〜」
タバコを買いに出ていた蛮ちゃんが漸く帰ってきた。
「随分時間が掛かったな」
波児さんがそう言えば、蛮ちゃんは不機嫌そうに口を尖らせた。
「一番近い自販機が、カードが要るって言うんでよぉ、向こうのコンビにまで行ってきた。店員がうるさくないとこまで足を伸ばしたからなぁ」
「これを期にいっそ禁‥」
「嫌だ!」
言い切る前に蛮ちゃんに嫌って言われてしまった。波児さんは苦笑している。ちぇっつ、禁煙してほしかったのにな。
「ところでよぉ‥‥」
「なに?」
言いづらそうな蛮ちゃんにオレは首を傾げて見返した。
「何で、夏実とレナは、お星様でもきらきらと飛んでいるような目をして、俺を見てるんだ?」
そういえば、店に戻ってきた蛮ちゃんを2人はずっとうっとりとした表情で見つめていたんっだっけ。
知らない人が見れば、明らかに蛮ちゃんに「恋する乙女」モードな2人。
でも蛮ちゃんもオレもそんな事無いって事を知っている。
「さ、さぁ? 何でだろうね?」
「‥‥‥。銀次君、何か知ってるな?」
「え? な、何のこと?」
「ほぉ‥、俺様相手にしらばっくれるのか? 吐け! さっさと吐け!」
「し、知らないもんは、言えないよぉ」
カウンターで騒ぎ始めたオレ達に波児さんから雷が落ちた。
「お前ら! 騒ぐんなら出てけ!!!(怒)」
本当に、いつもどおりの日常だ。
終わる