夏本番です。 今日は、蛮ちゃんとお買い物に来てます。
暑いということで、蛮ちゃんは、いつものスラックスではなく、七分丈のジーンズを履いてます。 上着もノースリーブのシャツです。 髪も降ろしています。 今までに何人の人が蛮ちゃんを見て立ち止まったり、振り返ったりしたか…。 俺は知らず知らず溜め息が出ていた。
『どうした?』
『えっ?』
『さっきから溜め息付いてんぞ』
『……そうだっけ』
『気付かないなんて重症だな』
と蛮ちゃんに言われた。 溜め息を付いた理由を知られたくない。 だから、俺は誤魔化した。
『暑くて参ってるだけだよ』
『本当に?』
『本当だよ〜。もぅ…蛮ちゃん、すぐそうやって疑うんだから』
と俺は笑って蛮ちゃんに言うと、蛮ちゃんは、
『それなら…いいけど…』
と言い、店の中に入っていった。 少し遅れて俺も店の中に入る。 すると、蛮ちゃんがムスッとして立っていた。
『どうしたの?蛮ちゃん?』
俺が声を掛けると、蛮ちゃんが指差す。 指差した方向には、見知った顔があった。
『あれ?銀次さん』
『カヅッちゃん?それに、士度、笑師まで…』
『偶然ですなぁ…蛮はん』
『本当に偶然か…』
『ぐ、偶然だぞ…』
『そうなのかなぁ〜』
『そうですよ。で、お二人は何を買われるのですか?』
『何って…今のとこは…』
『美堂くんは、泳ぎに行かないのですか?』
『泳ぎに?』
『はい。今度一緒に行きませんか?』
『……』
『確か暑いのは苦手でしたよね?』
『まぁ…な…』
『カヅッちゃん。何言ってんだよ』
『銀次さんも一緒にどうですか?』
『えっ!』
『今、士度達と行こうということになったんです。で、美堂くんも誘ってみようとなりまして』
『そんな言い方だと…俺はオマケだね…』
『あれっ?そんな風に聞こえましたか』
とカヅッちゃんはしれっと答えた。
『どうですか?一緒に行きませんか?』
『…行ってもいいが…』
『なんです』
『水着持ってねぇぞ』
『それはいけない』
『選びまひょ』
『そうだな』
と三人は意見をまとめて、蛮ちゃんの手を掴むと、
『水着を買いに行きましょう』
と言って、蛮ちゃんを水着コーナーまで連れていった。 俺は慌てて、
『ちょっと待ってよう〜』
と四人を追いかけて行く。 四人は、水着コーナーにいた。
『これなんかイイのでは』
とカヅッちゃんは、黒地のツートンカラーの水着を持ってきた。
『いや、こっちだろう』
と今度は士度が、青色の水着を渡す。
『蛮ちゃんにはコレだよ』
と俺が青と白のストライプの水着を渡すと、笑師が、
『三人はんは分かってへんなぁ。蛮はんにはコレ!』
と言ってセパレーツタイプの花柄の可愛い白い水着を蛮ちゃんに見せる。 その水着を見て、
『あぁ、そうかも…』
と納得していたら、笑師が、
『そうでしゃろ。では、蛮はん、どうぞ』
と渡そうとした時、
『…殺すぞ…』
と殺気に満ちた声で言われる。 慌てて笑師が、
『じょ…ジョークですやん。お茶目なジョーク』
と言う。 それを見た俺達は、
『あの人ならやりかねない』
思った。 すると、蛮ちゃんが、
『これがいいな』
とレジの近くにあった、濃紺に白いラインが入った水着を手に取る。 それを見た俺達は、
『いいですね』
『似合いそう』
『そうだな』
『丈はこっちがお似合いでしゃろう』
と少し丈の短いタイプを渡す。
『じゃあ、これで決まりな』
と言ってレジに持っていく。 お金は、なんだか知らないけど、カヅッちゃんが払ってくれた。
『では、明後日迎えに伺いますね』
と言われる。 早く水着姿の蛮ちゃんを拝みたいな…。
今日は、皆で海に行く日だ。 外は、何時もより暑く感じる。
『それにしても遅っえなぁ…何してんだか』
『そうだねぇ…』
と二人で話していると、自分達の前に一台のキャンピングカーが止まった。
『なっ、なんだぁ!?』
『えっ?えっ?』
二人でその止まったキャンピングカーを見ていると、中から、士度が降りてきた。
『悪い、遅くなった』
『……』
『どうした?』
『えっ、あっ』
『いや…どうしたんだ…それ』
と言って蛮ちゃんが車を指差す。 すると、士度が、
『今日の為に借りてきた』
と答えた。
『で、誰が運転すんだ?』
『俺も運転するし…まぁ、代わりはあと三人いるんでな』
『その三人の内に俺は入ってんのか』
『いや…入ってないが』
『ふーん、まぁいいけど』
と言って車の中に入ろうとして、蛮ちゃんが立ち止まった。
『どうしたの?蛮ちゃん』
『いや…この中に入るのは…』
『中?』
と思いながら中を見ると、中には、笑師とカヅッちゃんと十兵衛と…ん?黒い服の人と白い服の人が…。
『し、士度…なんでいるの、あの人達…』
『それは…車の持ち主だから…な』
『俺…行かねぇ…』
『……だよねぇ…』
『ダメですよ』
『折角のドライブなのにさぁ』
といつまにか蛮ちゃんの両側に、鏡さんと赤屍さんが立っていた。
『さぁ、いきますよ』
『さぁ、乗ろうね、ハニー』
『ちょっ…うわぁ…』
唖然としていると、蛮ちゃんは二人に強引に車の中へ連れて行かれた。
『えっ、蛮ちゃん』
俺も慌てて車に乗り込んだ。 中に入ると、蛮ちゃんが大暴れしている。
『離せー!降りるー!』
『ダメですよ…』
『そうそう…』
『だぁ…、誰がこいつら降ろせよ!』
と他のメンバーに訴えるが、他のメンバーも蛮ちゃんの水着姿を見たいから、この車の持ち主である、赤屍さんを降ろす事が出来ないんだ。
因みに鏡さんは、今回の主催も兼ねている。 二人を降ろしたい気持ちは皆も同じだ。 蛮ちゃんは暴れ疲れたのか、今は静かにしている。 物凄く不機嫌だけどね。
『ハニー、これ食べないかい?』
と蛮ちゃんに何か渡している。
『いらねぇ…何が入ってるかわかんねぇからな…』
『そうですよ…では、これをどうぞ』
『だから…いらねぇ…』
と言い掛けたが、
『それなら…貰う…』
と言って何かを赤屍さんに貰っている。 気になって蛮ちゃんに聞いてみた。
『何、貰ったの?』
『ジッポ』
と言って見せてくれた。
『もうすぐ着くぞ』
と士度が声を掛けてきた。 もう少しで蛮ちゃんの水着姿が見えるんだ。 ワクワクしてきた。
『わぁ〜、海〜♪』
車は海の近くにある駐車場に止まった。
『早く海に行こう、蛮ちゃん』
『ん、そうだな』
良かった、蛮ちゃんの機嫌も直ってるみたい。 俺は、蛮ちゃん達と水着を着替える為に、簡易更衣室に移動した。
『ここだね、更衣室』
『みたいですね』
『あぁ〜良かった』
『何が良かったのだ、雷帝?』
『だってさ、個室になってるでしょ』
『それがどうしたんだ?』
『もう、分かんないかなぁ。大きな一つの部屋に何人も一緒に着替える様になったら…』
『なったら…』
『着替えてる色んな人が、蛮ちゃんの着替えを見るでしょ!』
『あぁ…なるほど…』
『だから、着替えは個室が一番!』
と俺が言い切ると、蛮ちゃんに鉄拳を頭の落とされた。
『痛いなぁ!蛮ちゃんなにすんのさぁ』
『そんな目線で人の身体を見るのは、テメェだけだ!』
『俺だけじゃないのにぃ〜』
とタレて言う俺。 そんな俺を置いてさっさと着替えに行く蛮ちゃん。
『あぁ〜、蛮ちゃん待ってよう〜』
と言って俺も慌てて、空いている更衣室に飛び込んだ。 先に更衣室から出てきたのは俺だった。
『蛮ちゃん、どったの?手伝おうか?』
と言ってドアノブに手を掛けた時に、ドアが開き、勢いよく、蛮ちゃんがドアを引いた反動で俺に倒れかかる。
『うわっ』
『蛮ちゃん、大丈夫?』
『ああ。わりぃ…』
『……』
『なに?』
『…蛮ちゃん、可愛い』
『うわっ…ちょっ…』
勢いよく蛮ちゃんに抱き付こうとした時、琴糸が俺に絡み付いてきた。
『大丈夫ですか…美堂君』
『ん…ダンケ…』
『いえ…大丈夫ならいいのです。…銀次さん、場所を考えてください…ね』
『…はい』
カヅッちゃんに怒られました。
それから、皆でビーチバレーをした。 もちろん、罰ゲーム付きで…。
『銀次、倒すぞ!黒白コンビを!』
『ラジャー!』
って言った割りには、負けちゃいました…。 蛮ちゃん凄く悔しそうにしてた。
それから、海に入って、バーベキューをしてから、帰るようになった。 車の中では、朝来る時あんなに暴れた蛮ちゃんだったけど、帰りは凄く静か。 気になって蛮ちゃんを見てみると…、
『可愛い〜vv眠ってる〜vv』
グッスリと士度にもたれ掛かって眠っていた。 ソッと、写真を撮っちゃいました。 また、行きたいね…蛮ちゃん。おわり
††††††††††††サイト開設半年を記念して、三部作で書いてみました。夏なのでやっぱり…海でしょう。ここはフリーにします。ここまで読んでいただき有難うございました。
コメント もらってきたのは夏終わりごろ…。UPまでに嫌に時間が掛かってしまいました。 とはいえ、katty様の更新の速さに感服します。
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