蛮ちゃんは『強がり』で、出来ている?






俺は…、自分の権利を放棄したんだろうか?

赤屍に言われて、ギクリとした。

奴曰く、俺は「人」であることにこだわっている、らしい。ああ、そうかもな。

恐れているんだ。「人」でなくなる事を。

あの女が俺に投げつけた言葉が、現実のものとなる事に、怯えている。



そう……、おそらくそうなんだろう。

俺はそれで「先」に、「上」へ行く事を銀次に譲ったんだろうか……?

母親に…、会うのが、恐かったから……?



恐い、って事は…、俺は、母親に会いたかったのか?

自分でも分からないのに、本当は、そうなんだろうか?

けれど、親父に言った事は本心だ。自分でそう確信しているんだ。あの場限りの言い訳じゃない。

「憎んでいない」

だって…、手を繋いで歩いた記憶がある。

すっかりと色あせてしまっていて、あれが現実だったのか自分でも怪しくなってしまっていた記憶。

親父があれを現実にあった出来事だと肯定してくれた、あの時。

だって…、あの時、母親は微笑んでいた。俺に向って。

愛されていた…この記憶。

ずっと夢かもしれないと、忘れるべきものだと思い込もうとしていた。

幼かった日々、日本で暮らしていた記憶。

ずっと本当じゃないんだと、これはただ俺の無意識の願いを夢見ただけだと、もしくはババァに掛けられた邪眼で見ただけだ、と……

とにかく幼かった俺は、あの時までの幸せだった日々を全て、嘘の記憶だと決め付けていた。

そうしなければ、母親の叫びに、俺自身が耐えられなかったんだ。心が壊れてしまいそうで。





俺は、自分で言っているほど強くは無い。…銀次が、憧れているほど、強くは無い。

銀次や、波児、夏実のような心の強さなんて…持ち合わせちゃいねぇ。

だからこそ、強くなりたかった。

ただの物理的な強さだって構わなかった。

誰かに、「強い」と認めて欲しかった。

ただ、それだけで、力を身につけた。使い方、なんてモノは、俺だってその実判っちゃいなかったんだ。

未熟な……、幼子。

大人になりきれてない。

自分で分かりすぎるくらい、分かってる。

だから……

だからこそ、銀次に託す事にしたんだ。あいつの、迷い無い心の強さに…

こんな俺を、「強い」と信じきってくれた銀次に。

ほんの少しの迷いさえも持たずに………

だから、俺は。お前の信じてくれた俺のままでいいのだと、今迄歩いてきた道はけっして間違っちゃいなかったのだと、今初めて信じられる。





だから……


天の光よ、その具現たる、力よ…


俺の未来なんて、無くってかまわねぇから、今此処に居る、ありのままの「俺」を照らしてくれ





「誰が‥‥、弱い、って?」

俺も、信じる事にするよ、銀次。

俺が「強い」って事を、さ。





コメント:最終回前の、屍さんとのバトル最中の蛮ちゃんの独白です。意味不明ですか? すいません。(焔)


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