夕方から降り出した雨は夜になって雪に変わった

あと数日でオレの誕生日だっていうのにさ

何十年ぶりなんだってさ

こんな時期に雪が降るのは





サクラの花が今を盛りに咲き誇っていた。

ついこの間の土曜日にいつものメンバーで花見をしたんだ

その時のちょっとした出来事で蛮ちゃんを怒らせちゃったんだ

まあ怒ったっていうより拗ねたって方が正解なんだけど

その所為で、オレとの間はなんとなくギクシャクした空気が漂っている


このいやーな空気をなんとかしたいけど、何も出来なくてすでに一週間がたっちゃった。




ボケっと窓の外の降りしきる雪を見てた。

「銀次、花見に行こう」

「え?雪降ってるよ?」

「嫌なら、いい」

「い、嫌じゃない」

蛮ちゃんからそんな事を言ってくるなんて、雨が降るかも…って雪が降ってるんだった。

「暖かい格好しろよ」

そんな事言ってる蛮ちゃんの格好はいつもの格好に上着を羽織っただけ。

「ちょっと、オレより蛮ちゃんも暖かい格好してよ」

そう言いながら掴んだマフラーを蛮ちゃんにまく。

オレはいつも持っているディバックを肩に掛け玄関へと向かった。

「お待たせ、行こう」

にっこり笑いかけたらぷいとそっぽを向かれちゃった。

でも耳が赤くなってたから照れただけみたい

雪が降ってるから、てんとう虫君じゃなく歩き

寒いけど、会話が無いけど、なんとなくオレのこころはあったかだ

ライトアップされた公園まで、あるいて30分ほど。

それだけ歩けば身体も結構暖まる

公園には人気が全くなかった。

この雪のなか、夜桜見物しようなんて人は珍しいだろう

そういう変わり者なんだけど、オレ達。



サクラの花にうっすらと雪が乗っている

なんか不思議な感じだ

サクラの花びらの代わりにひらひらと雪片が舞い散って


「キレー」

「だな…。思った以上だな」

「うん」

光を弾きながら雪が舞い、花が咲き誇る。

明るい色合いのせいか、夜中のはずなのに暗さは感じ無かった。


「まるで、俺と銀次の誕生日をまとめているみてぇ」

「え?」

オレは考えた。

蛮ちゃんの誕生日は12月。冬だから、雪のイメージ。

オレの誕生日は4月で、桜が一番思いつく。

「本当だね。桜の花に雪。いっしょにお祝いしているみたい」

蛮ちゃんを見れば、優しい透明な笑みを浮かべてて、そのまま消えてしまいそうだ。

そうじゃないって、オレは蛮ちゃんに抱きついた。

「なんだ? いきなり」

蛮ちゃんが居なくなりそうだから、なんて言えない。

だから

「寒そうなんだもん」

そう言った。


それが、オレには精一杯

ただ抱き締めて此処に蛮ちゃんが居ることを確認する


「………、消えねぇよ」

小さな呟き声だった

「…ちょっと早いけど、誕生日おめでとう」





オレはますます力を込めて蛮ちゃんを抱き締めた



終わり







もどる