今日は10月31日。 ハロウィンだ。 すっかりこの季節に当たり前のイベントとして定着してしまったからには楽しまなければ損だ。 そう思っているのかどうかは知らないが、ホンキートンクでも、本日は貸切でハロウィンパーティーだった。 店の前には貸切と書かれた看板が存在を主張している。 既に何人かは店の中で騒いでいるらしく、にぎやかしい声が漏れ聞こえてきていた。 「あー、笑師の声だ」 銀次は聞こえてくる姦しい関西弁に苦笑した。 ドアを開けて中に顔を突き出せば、カランと鳴ったベルが来訪者の在ることを店内の皆に告げた。 「こんばんは」 「あ、銀ちゃん、いらっしゃい」 「おー、やっと来たか」 「いらっしゃいませ」 夏実、波児、レナから声を掛けられ、銀次はバツが悪そうにえへへと笑った。 「準備に思った以上に手間取っちゃってさ。ごめんなさい」 そう言いながら入ってきた銀次の服は真っ黒であった。ご丁寧にシルクハットにマント、ステッキ付きだ。 「そういえば、蛮さんは一緒じゃないんですか?」 「え…、あ、蛮ちゃんならここに居るよ」 銀次がマントを抓みめくりあげれば、銀次の足にしがみつくように年の頃5、6歳の子供がいた。 柔らかそうな黒い髪と大きな青い瞳。 「え? 蛮さん?」 「おう!」 子供はそう言うと、にっ、と笑った。
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