「そう言う銀次君はなんですか?」と、赤屍。 「え? オレ? オレは悪魔メヒ…えっと、メヒト?」 「メフィストフェレス! それくれぇ、ちゃんと覚えろ!」 「ごめ…、蛮ちゃん」 「まあまあ、落ち着いて美堂君。君は何なのかな?」と、鏡。 「俺様は天使だ!」 えっへんとふんぞり返る蛮の見かけはあくまでも5、6歳の子供。 白い長いワンピースのような服を着ている。その背中には作りものの羽根まで着いていた。 「あんた、その仮装する為にだけ、子供になったワケ? ばっかみたい」 「ひ、卑弥呼ちゃん」 「うるせーよ。そんな事、どうでも良いだろうが。そういうてめぇは、なんつー格好だよ」 「見ての通り、魔女よ。定番でしょ」 卑弥呼の服は裾が幾重にも分かれた黒いミニスカートのワンピース。黒の先の折れた鍔広のとんがり帽子。足は黒い網タイツに黒のロングブーツ。 「なかなか似合っていますよ」 「わぁ、花月さん、凄い。なんですか? それ」 近づいてきた花月に夏実が聞けば、彼はにっこりと笑って返してきた。 「白拍子ですよ。変っていて良いかと思ったもので」 水干に緋袴。頭には烏帽子だ。一見すると神社の巫女さんのようにも見える。 「確かに、普通は思いつかぬな」 「ああ、流石花月」 彼の後ろから現れたのは似たような姿をした、筧十兵衛と雨流俊樹だ。 二人とも着物姿に袴という井出たちで、違いと言えば、十兵衛は眼帯に曲げを結ったカツラ付き、雨流の方は、鉢巻に自前の髪をポニーテールのように縛っている。 「俺は、柳生十兵衛だ」 「お、俺は宮本、武蔵で…」 二人が名乗ると笑い声が聞こえてきた。 「十兵衛ってば、名前までそのままじゃない」 「マクベス!」 笑い声と共に現れたのは、オーソドックスな西洋お化けだ。 いわゆる、シーツを頭から被っただけの、アレである。 どうやら西洋お化けの正体はマクベスのようだ。 その彼を追いかけて後から現れたのは巫女装束の朔羅だった。 「朔羅、似合うね」 「ら、雷帝、からかわないでください」 恥ずかしそうに赤くなる彼女に、暖かな笑が広がった。 「後は、遅れてきている士度さんとまどかさんだけですね」 夏実がそう言った途端、ドアが勢い良く開かれた。 「悪い、遅くなった」 「すみません。コンサートの打ち合わせが長引いてしまって」 入ってきたのは遅れてくる2人だ。 「丁度いいとこですね。まどかさんは、何の仮装ですか?」 まどかの服は、小さな赤い帽子を頭にちょこんと乗せ、刺繍入りのスカートの何処かの民族衣装のような服だ。形だけならオランダのあの服にも似ている。 「あ、赤ずきんです。ドイツの…。だったと思うのですが」 「ああ、メルヒェン街道のか。で、猿回しの、それは?」 蛮が士度のお尻にぶら下がった尻尾を指差した。 「ああ、俺は狼男ってとこで。って、お前蛇なのか〜!」 「おう、今更! お前らいっそ美女と野獣にすればよかったのによ」 蛮の突っ込みに、同意の叫びが多数上がる。 士度にもその自覚があったのか、ムッと顔を顰めたが照れ隠しの意味の方が強いようだった。 「はい、これで全員揃いました〜」 夏実の声に勢い良く皆が応える。 「HAPPY HALLOWEEN!」 波児の音頭に皆が手に持ったグラスを掲げ声を上げた。 「かんぱ〜い!!」
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