いたずら万歳 4


立食形式にセッティングされたテーブルの上に何があるのか、見ようとして蛮は精一杯背伸びした。

しかし、小さな体ではほとんど見ることはできなくて、唸った。

「蛇、何してるんだ?」

「猿回し! 料理が何があるのか見ようと思ったんだけど…、背が届かなくって、うわあぁ」

急に持ち上げられて蛮は慌てた。

「こら、暴れるなって。これなら見えるだろ」

「え? あ…、さ、サンキュー…」

「美堂君、何が欲しいんです? 取ってあげますよ」

「糸巻き。えっと…、あれとあれ、あとそっちの」

「はい、コレとコレとコレですね。はいどうぞ」

蛮が指差した料理を取り皿に盛り付け、皿を差し出した。

士度は下に降ろしてから、フォークをとり差し出す。

「サンキュー、な」

にっこり笑顔で受け取ると、蛮は早速皿の上の料理を頬張った。

「今の美堂君は子供で小さいのだから、できないことは皆の手を借りて、甘えてもいいんですよ」

「え…、でも…。それは…」

蛮が躊躇うと花月は笑顔で「それでいいんですよ」ときっぱりと言い切った。

蛮は何とかえせばいいのか、わからずに黙ったまま見つめかえすだけ。

「あら、蛮君。料理は取ってもらったのね。何か飲む?」

「オレンジジュースなら、ここにありますよ。はいどうぞ」

夏実がジュースの入った紙コップを差し出した。

「あ…、サンキュー…」

「どういたしまして。何か取れないものとかあったら遠慮しないで言って下さいね」

にっこり笑って夏実は別のテーブルへと行ってしまった。

「なんで…、皆、手を貸してくれるんだ? 俺は子供じゃ無いぞ」

「なんでって、今は子供じゃないの。蛮君ってば、理屈こねすぎよ」

ちょこんとヘブンに指で鼻先をつつかれ、蛮は赤くなった。

「だって、自分でやらなきゃならないって…ずっと、そういうモンだって…」

「ああ、それでか。お前が他人に頼らねぇのって」

「頼り方を知らなかったんですね」

士度と花月は納得したようにつぶやいた。

「聞きましたけど、蛮さんは今子供だとか。その姿になったのは、どうしてですか?」

いつの間にか近くにきていたまどかにそう訊かれ、蛮は口ごもる。

「こ、これは…その…マリーアの奴が…その、いたずら、で…」

「ああ、ではマリーアさんは、あなたに甘えるって事を知って欲しかったのかもしれませんね」

まどかは得心がいったように手を合わせた。

「甘える? なんで嬢ちゃんは、そう思うんだ?」

「だって、私は小さい頃から、他人に手伝ってもらわなければ、何も出来ませんでしたから…。蛮さんと逆ですね」

蛮は、ちょっと黙って考えてみた。

見えないから、何をやるにも誰かに手伝ってもらわなければならない、子供だった当時にはそんな状況なんて想像も出来なかっただろう。

生き残る為にはありとあらゆる手を使って、自分だけの力で生きてきた。

そうじゃない生き方があるなんて、あの頃は思いもしなかった。

「どうかしましたか?」

黙ってしまった蛮にまどかは心配げな声をかけた。

「あ、なんでもない。何となくだけど…、マリーアがどうして子供にしたのか、分かったような気がする…」

「そうですか? どうせですから、楽しんじゃいましょう、ね?」

「おう。そうだよな」

子供の姿にされた事に不貞腐れていたけれど、この姿の、今ならわがまま言って頼っても許されるらしい。

本当に子供の頃じゃ出来なかったけど、今ならできるかもしれない。

蛮が体験できなかった、子供として甘える事が…。










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ちっちゃい蛮ちゃんを皆がかまいたい篇(笑)