「うー、銀次のくせにぃ、らまいきらっ。俺様はらぁ、おこらまら、ないんらろっ。らっこなんらっ、すんらぁ!(うー、銀次のくせに生意気だ。俺様はなぁ、お子様じゃないんだぞ。抱っこなんかするな)」 「あー、はいはい。ホント、酔っ払いなんだから」 「らんらとぉ(なんだとぉ)」 「はいはい、わかったから大人しくしてよ。落としちゃうでしょ」 銀次の腕の中に収まる蛮は、癇癪を起こし暴れ叫ぶ。 「まぁ、蛮君ってば、小さいから癇癪を起こしてても可愛いわね」とヘブン。 「生意気さは変わらないみたいだけど」と卑弥呼。 「でも、可愛いですよねぇ」 「はい! そう思います!」夏実とレナ。 癇癪を起こす蛮に女性陣から容赦ない言葉が飛び交う。 「でも、本当に小さな子供みたいですね」と朔羅 「本当だ。なんだかああしてると、銀次さんはいいお父さんみたいだよね」とマクベス 周りの楽しげな会話に、笑顔でまどかも参加していた。 「なんだか、見えない事がすごく残念な気がするのですが……。士度さん? どうかしたんですか?」 押し黙ったままの士度を伺うように見上げた。 といっても彼女は見えないから、気配で居るだろう位置に顔を向けただけだが。 士度は頬を赤く染めて、ぶっきらぼうに「なんでもない」と答えた。 その実、銀次を自分に蛮をまどかとの子供に置き換えて想像していた彼だった。 「あの甘えっぷりってば、有り得ないわよね。いくら見かけが子供でも」 と、ヘヴンが言えば 「甘えさせるのが目的だったんなら、十分すぎるわよね」 と、卑弥呼が返す。 「すごーく、ラブラブですよねぇ」 「夏実ちゃん、それ違わない?」 「先輩の言う通りだと私も思います!」 「そうだよね、レナちゃん!」 女性陣のこそこそ囁きあう声も、酔ってどうでもいい蛮と違い、しらふの銀次には針のむしろだ。 冷や汗たらりとさせながらも、引きつった笑顔を貼り付けている。 蛮は暴れ叫んで疲れたのか、舟をこぎ始めていた。 「流石にお子様か? ほら、毛布だ。椅子にでも寝かせてやれ」 「うん、ありがとう波児さん」 銀次は蛮を毛布でくるむと、壁際に並べられた椅子に座った。 蛮は抱いたままだ。 蛮の手はしっかりと銀次の服を握りしめていて、簡単には放さないようだった。 それだけ、蛮は銀次になら甘えられるのだろう。 「蛮のそれはミス・マリーアが犯人だそうだが?」 波児が銀次に聞けば、彼は苦笑を浮かべ、事情を話す。 「ホントはね、オレが今着てる格好を蛮ちゃんがする筈だったんだ。マリーアさんのとこに借りに行ったら、なんだかマリーアさんが酔っていて、エイってなんかしてさ、気がつけば蛮ちゃんが子供になっちゃってたんだよ。で、蛮ちゃんが今、着てる服を出してきて、無理矢理着せたの」 「流石に蛮君も抵抗しきれなかったのね」 溜息と共にヘヴンが零す。 卑弥呼と夏実、レナはうんうん、と頷いて同意を示していた。 「「似合っている」」と十兵衛と雨流。 「まあ、ハロウィンだからなぁ、彼女も浮かれたんだろう」 話題の蛮はすっかり熟睡中だ。
蛮が寝入ってしまい動けなくなった銀次は皆に料理や飲み物を取ってもらっていた。 代わる代わる皆は蛮を見にきて、銀次に何かを持ってきてくれる。 そんな和やかな時間が流れ、あらかた料理を食べ尽くした頃、波児が手を叩いて皆の注意をひいた。 「さーて、仮装の投票をしようか。蛮とまどかちゃんは投票なしだか、他の皆は投票してくれよ。一応賞品がでるからな」
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