同じベッドで眠り、同じベッドで朝を迎える。
あなたは、まだ眠っている。
形の良い唇から規則正しい寝息が吐き出されている。
閉じた瞳の陰さす睫に驚きながらも整った鼻梁にうっとりと目を細める。
なんてハンサムなひとなんだろう。
そっとあなたの唇に指を這わせると、小さく唇が震えて動いた。
この唇から躍りでる言葉は、どんな時も私の胸を高鳴らせる。
時には激しく、時には優しく、心地よく、時には締めつけるような悲しみと、痛みさえ伴って。
だからこそあなたは唯一無二の真実の人。
私の大切な奇跡の人。
まだ……。
この身は彼の熱さを覚えている。
夜の帳の中であなたを深く迎え入れた。
激しくも優しく、あなたの愛の前に私は翻弄されて、いつもあなたにしがみついては悦楽の涙を零す。
愛されることの喜びを体いっぱいで感じていた。
愛するひとと睦み合うことの喜びを魂で感じていた。
私の黒髪を愛おしげに梳あげるあなたの手に指絡ませ、うねるような波に攫われてゆくに任せた。
あなたという波に。
あなたの静かに穏やかに眠る顔を私は覗き込むように見つめている。
まだ起きないでね、と祈りながら。
こんなふうにひとを愛することができるとは、こんなにも愛を迎えることができるとは誰が想像できただろう。
聴罪師長であるこの私の傍らに『虜』ではない『真実の愛』を語る者が現れるとは。
長い長い長い、気の遠くなるような永久の刻を、どれほどの聴罪師達が渇望してきただろう。
───愛しいひとよ、どうぞ私に触れて。
愛しいひとよ、どうぞ私を見つめて。
愛しいひとよ、どうぞ私を愛して、
真実の言葉で輝く瞳で。
『御主人様』と膝まづかないで───
愛する心はここにある。いつだって『あつく』輝いていたわ。『あなた』を守る為に『冷たく』光りながら、深く深くにマグマのような愛は今のここにあるのよ。
信念とは貫く心。強く願えば思いは叶うもの。歩む未来の道はひとが決めるのだとあなたはきっとそう言うでしょうね。
真面目な顔で? それとも笑って?
愛しているわ、愛しているわ。
愛しいひと。
愛しているわ、愛しているわ。
真実の人。
愛しているわ、愛しているわ。
戦いの魔道師。
愛しているわ、愛しているわ。
ダーラ帝国の偉大なる君主。
愛しているわ、愛しているわ。
リチャード、私の夫、命と光。
「どうした…?」
私の願いも虚しく、いつからかあなたは目覚めて、その輝く瞳で私をみつめていた。あなたの指がそっと私の頬に触れた。
私の瞳からとめどなく零れる涙を指で掬いながら、あなたはとても穏やかに微笑んだ。
私はただ無言で首を振った。
「昨夜は無理をさせたかな……」
私は子供のように首を振ると、零れる涙が粒となって散ってゆく。
「じゃあ、どうして……泣くんだい」
「………幸せだからよ」
「幸せだと泣くのかい」
「わからないわ」
私の言葉に彼は笑った。
「僕も幸せだ。君と二人、ずっとこうやって朝を迎えたかったんだ。君は、カーラン?」
「私もよ、リチャード、夢を見ているようだわ」
「現実だよ、決して覚めない。さっ、キスをしておくれよ奥さん。お早うのキスだ」
私は涙を拭うと、「ええ…」とうなづきながら、そっとあなたの唇に唇を重ねた。
お母様、愛はゆるがない。
私は今、こんなに幸せよ。
コメント:短い話しになりましたが、最後までお読みいただきましてありがとうございます。最後までお読みいただきながらこりゃあ、いったいなんの作品? と首を捻られた方案外多いかもしれませんので一応御説明をば。早川書房より発行されております、テリー・グッドカインド氏(佐田千織氏訳)原作のファンタジーノベルズ『真実の剣』シリーズのパロです。もうはまりまくっております。もう何年来? (かな…;)の引きずりまくりです。一言でファンタジーというと、剣と魔法の世界を思い浮かべることと思いますが、御期待通り剣と魔法の世界ではあるのですが、その内容はかなり大人向けであります。アメリカでは禁断の物語りともいわれ、とくに女性に人気が高いそうです。アブな匂いは山のように漂ってますよ。(注:BLではありませんよ)物語りの説明はここでは行ないません。お読みになったことのない方で、興味をもたれた方はぜひ一読してみてはいかがでしょうか?
(現在第7部の3巻、トータルでいうと34巻かな。出てます;一読するには……)
尚、映像化にもなるそうなので、楽しみのような恐いような…。(あれを映像にできるのか? やばいとこはださないとかかな………。う〜む)
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