『独占欲』
爽やかな初夏の陽射しの中、公園のベンチに腰掛けて、奪還屋の二人はコンビニおにぎりで、お昼を取っていた。
(蛮ちゃん、大丈夫かなぁ‥‥)
銀次は横目でちらちらと蛮の様子を伺った。
蛮の方はどことなくぼんやりとしたまま、時折思い出したように一口おにぎりをかじる。酷くだるそうで、普段の横暴さなど欠片も見えない。
はっきり言えば、覇気がないのだ。
(昨日、やりすぎちゃったもんねぇ…、でも蛮ちゃんが色っぽいのが悪いんだよね)
心配げな顔の裏で、銀次はそんな事を考えていた。
実際のところ、蛮を今日の明け方まで眠らせなかったのは銀次だ。行為の最中に意識を飛ばして失神した蛮を無理やり起こし、しつこく貪ったのだ。
最後には、目を開けてはいるものの、ぐったりとしてしまい、銀次を慌てさせたのだけれど。
そんなになるまで、彼を独り占めして抱いたのに、それでも銀次は足りないと感じてしまうのだ。
「蛮ちゃん‥‥大丈夫?」
「‥‥‥‥」
問いかけに返事は返らず、ぼんやりとしたままの態度から聞えていない事が分かり、銀次はにんまりと口元に笑みを刷いた。
蛮がたいして大きくも無いおにぎり一つをようやく食べ終わったのを確認してから銀次は行動を起こした。
ベンチの後ろに回りこむとそのまま蛮の事を羽交い絞めにして、無理やりに立たせる。
「え? お、おい? 銀次?」
蛮の声を無視してそのまま引き摺るようにスタスタと歩き出した。
焦ったのは、蛮の方だ。
銀次のいきなりの行動の意味が分からない。
「おい! 銀次! いきなりなんだ?」
しかし銀次は応えない。
蛮はそのまま大した抵抗もできないまま、公園の外周を囲う木立の中へと連れ込まれてしまった。
生い茂る木立はそれなりに人工の森を形成するように配置されていて、周囲からの視界と音をそれとなくさえぎっていて此処が都会の中心地の公園だと言う事を一瞬、忘れさせた。
「此処なら、蛮ちゃんを独り占めできるよね」
「は?」
「何だか、ぼ〜っとしてる蛮ちゃんを見てたら、他の人に見せたくなくなっちゃったんだ」
「何? お前、ひょっとして、盛ってんの?」
「うん。我慢なんて出来ないくらいに、ね」
蛮は、諦めに似た溜息を吐いた。
「あんま、無茶させんなよ。今日だって朝までやってたんだろうが」
「あんないんじゃ、全然足んないよ」
銀次は蛮を抱きすくめると、胸に頭を擦り付ける。
「は〜、手加減しろよ」
「あ、‥‥っんん‥う、‥んっっ!」
全裸にされるのは流石に蛮が抵抗した為に、中途半端にだけ脱がされた。
今の蛮の格好は、前を全部はだけたシャツに腕を通しただけと、膝まで下げられたズボンと下着。
その背を木の幹に預けて喘いでいる。銀次はそんな蛮の前に膝を付いた状態で、彼のオスを口にしている。
じゅぶじゅぶと音を立てながら、自分のモノが銀次の口から、出し入れされているのが視界に入り、蛮は身を捩る。蛮と違い、銀次は衣服を乱してもいない。
「や、あ‥‥あ、あ、‥っあ」
びくりと蛮の体が震える。達しそうだと悟った銀次は根元に指を回しせき止めるように締め付けた。
そうしておいて、濃厚に舌を絡めて愛撫する。
「あ、ぎ、銀‥‥じ、手、はな‥せ、あ、ああっ」
「まだダメだよ。簡単にイッちゃ、楽しくないでしょ」
銀次は堰きとめた手はそのままにして、空いている方の手で蛮のペニスから零れている先走り
を掬い取りそのまま後ろの入り口へと指を這わした。
硬く閉じられたままの入り口の襞に、先走りの精を塗りこむように撫で付ける。
数度繰り返せば、6時間ほど前まで銀次を受け入れていたソコは簡単に綻んだ。
「あ、あ、あ…、んんっ、ぎ、ん‥‥」
「もうちょっと我慢してよ。蛮ちゃんってば、最近堪え性がなくなったんじゃない?」
銀次は言いながら指をつぷりと埋め込んだ。
ゆっくりと捏ねるように回し入れ、態と蛮に大きさや太さなどが感じ取れるようにしてやる。
一度奥まで押し込んでから、ゆっくりと引き出し、抜け落ちそうになるまで引いてから、その指で入り口を広げるようにぐるりとなぞる。そうしてから、今度は一気に置くまで突き刺すように押し込んだ。
「ひ、ああっ!」
びくんと蛮の体が跳ねた。
けれど達するほどの刺激ではなくて、もどかしい熱だけが堰き止められた中心に集まって行く。
「蛮ちゃん、もう少し、足開いてよ」
「うあっ、あ、無‥無理っ‥‥、ズボン‥が、邪魔して、あ、ああっ」
にんまりと銀次は口の片方だけを吊り上げて、笑みを浮かべた。
「仕方ないなあ。てつだってあげる」
「あ、や、‥‥やめっ‥‥」
銀次は蛮の中に埋め込んでいた指を引き抜くと、その手でズボンを掴み力任せに下へと押し下げた。そうしてから、片方の膝を抱え込みそちら側の足をズボンから引き抜いた。
「これで開くでしょ」
「ば‥‥かっ、ヤ‥‥ロっ‥」
「あ、手伝ってあげたのに、そんな事言うんだ。いきたくないの?」
根元を締めていた指にほんの少しだけ力を加える。ニコニコと笑顔を浮かべたまま、加減しながら、蛮の恐怖を最大限煽るようにと。
「ひぃ、やっ‥ヤメェ‥‥銀次ぃ〜」
「ん? 何?」
「も、イかせて‥」
「ん〜、どうしようかな〜。折角だしさぁ、オレも蛮ちゃんの中に入りたいんだけどさぁ。蛮ちゃん。自分で入れてくんないかな?」
銀次は地面に胡坐に座り、下から蛮を見上げて言う。勿論、蛮の中心を握った手はそのままだ。
「〜〜〜、わ、わかっ‥‥った‥」
顔を朱に染め、蛮はゆっくりと背を木の幹からはがす。そのまま銀次の前に膝を付き、震える指で何とか銀次のモノをとりだした。
銀次も今までの蛮の痴態に煽られていて、ペニスは既にはちきれんばかりにその存在を主張している。何時もより大きくなっているような気がするのは、蛮の気のせいなのだろうか?
膝でにじるように移動して位置を合わせ、銀次のペニスに手を添えて、蛮は自分の後ろ口にあてがうように導く。つんと銀次のペニスの先端が入り口に触れただけで、入れた時の快感を思い出した体が震える。
「蛮ちゃ〜ん、まだかな〜? 早くしないと、気が変っちゃうかもね」
「あ、う、うるせ、もうすこし‥だ、って‥‥」
そろそろと腰を沈め、ゆっくりと銀次を飲み込んでいく。大きく息を吐き、出来る限りゆっくり、ゆっくりと時間を掛け慣らすように。
慣れているとはいえ、貫かれる衝撃が全くなくなるわけでは無い。他人の手で、というのなら痛みにも諦めが付くが、自分から好んで痛みを味わいたいわけでは無い。
「も〜、まだるっこしいってば」
銀次はくすくす笑いを滲ませて、そう言うと空いた手で蛮の片膝を掬った。
当然、蛮はバランスを崩し、その身体は重力にしたがって下へとストンと落ちる。そうなれば、状況からして一気に銀次のペニスを飲み込む事になり、しかも自分の体重分、荷重が加わり、何時も以上の奥まで貫かれた。
「っっっっ〜〜っ!」
悲鳴は声にもならなかった。
銀次の股間には熱い液体に濡れる感じがじわじわと広がってくる。おそらく、蛮の流している血だろう。周囲にも鉄くさいさびた匂いが薄っすらと感じ取れる。
「はぁ‥、はぁ‥、はぁ」
荒い息はなかなか整わない。銀次を最奥まで受け入れている口は、ジンジンと熱を持ってしびれ、痛いのかすら分からないほどだ。
「ぎ、銀‥じ、手‥、手、はな‥せ‥。イか、せろ‥よ」
「ああ、忘れてた。約束だもんね。放してあげるよ」
根元を締めていた指を放すと、蛮はあからさまに安堵の溜息を吐いた。
「せっかくだしね、ほら、イキなよ」
ずん、と大きく銀次は腰を突き上げた。最奥までくわえ込んでいた上に突き上げられて蛮は白い喉を大きく逸らして喘いだ。
突き上げられた衝撃で、蛮のペニスからは精が大きく弧を描いて撒き散らされた。それは、蛮の胸や腹、銀次の腹をしとどに濡らした。
「んッ‥‥は、はぁ‥」
「あんまりでないね。昨日いっぱい出したからかな」
後ろに仰け反るように倒れこむ蛮の背を手を差し出して受け止める。自分の方に引き寄せるように抱き起こす。
「蛮ちゃん、まだだよ。オレはまだいってないよ?」
「あ‥っ‥‥、あ、ううっ」
銀次は蛮の腰を掴んで揺さぶった。
「あ、ひっ‥、うあ、あ、あ」
蛮は目の前の銀次にしがみつく。
「蛮ちゃんの中、オレのにおいしそうにしゃぶりついてるよ。ホントに食べられちゃいそうだね」
銀次は軽く小刻みに腰を突き上げた。
その刺激に蛮の中がきゅうっと銀次を締め付ける。
「ああ、こういうの好きなんだ。オレの、おいしい?」
耳に囁きながらも動きは止めない。
「あ、あ、あ、ああっ、も、ぎ、銀!」
揺さぶられる振動に蛮自身も銀次の腹に擦り付けられて力を取り戻してきている。
「気持ちいいなぁ。蛮ちゃんの中、熱くってさ、オレ、出たくなくなっちゃうよ」
「んあ、‥っあ、あ、あ、あうっ」
しつこく揺すりたてられはするが、決定的な刺激には欠けている。生殺し状態の蛮のペニスははちきれそうに主張し始めていた。
「オレがまだイってないんだから、蛮ちゃんは待ってくれなきゃダメじゃん」
再び根元を銀次に堰き止められてしまい、蛮は大きく身を震わせた。
「やっ‥‥、んあっ、は、はな‥せっ、やあっ」
「ダメだよ。オレをイかせてくれなきゃ」
銀次は蛮を気遣うことなく大きく突き上げた。
「ヒィ‥、や、ぎ‥‥ん、じぃ‥」
蛮のペニスの先端からは既にとろとろと蜜のように白濁が零れ落ちてきている。
「蛮ちゃん、ほら、オレがイかなきゃ、手を放してはげないよ?」
「あ、う…」
仕方なく蛮は自分から腰を揺すり、銀次をイかせようとぎこちなく動き出した。
「そうそう、なかなか上手じゃない。もっと、こう、回す様にするんだよ」
腰を掴んだ手で大きく円を書く様に回させる。
「ひ、あ‥‥、うぅ」
蛮は銀次にますますしがみつき、必死に刺激に耐えている。熱はますます籠もるが、銀次の手がしっかりと抑えて開放する事は出来ない。
ほら、しっかりやってよ」
銀次が促せば、再びぎこちなく蛮は腰を振る。
イきたい、イきたい、イきたい
蛮の頭の中はそれだけで、他の思考は快楽に溶けてしまっている。段々と恥ずかしさも快楽になって、蛮は我を忘れて、夢中で腰を振った。
「意外に、蛮ちゃんてばいやらしいんだ。此処ってば外なのにさぁ、下半身素っ裸で、オレの上に乗って、おいしそうにくわえ込んで腰振ってさ」
「あ‥‥、だ、だって‥、これは、銀、次‥が、‥あ、あぁ」
「オレはちゃんと服着てるじゃん。今だって、オレは何にもしてないよ? 蛮ちゃんが夢中で腰振ってるだけじゃん」
にんまりと、銀次が哂う。
「で、でも‥‥」
快楽に溶けた頭は明確な思考を形成など出来ない。だから、今の蛮に出来るのは、銀次にしがみつく事だけ。
彼を満足させ、この残酷な支配から一刻も早く解き放たれる事だけ。
「も、もう‥、だ、ダメ‥‥、お、おねが‥‥。イ、イかせ‥。おわ、れ‥って‥‥」
荒い息の合間に、何とか言葉を紡ぎ、限界を訴える。
か細いとも言える声に銀次は蛮に見えないように満足げな笑みを浮かべた。
「仕方ないなぁ、手伝ってあげるよ」
黒い笑みを浮かべて、蛮のペニスを開放すると、腰を掴んで思いっきり突き上げてやった。
ゆらゆら‥‥‥‥
ゆらゆら‥‥‥‥
揺られる様が心地いい‥‥
ゆらゆら‥‥‥‥
ゆらゆら‥‥‥‥
このまま、ゆっくり眠りたい‥‥‥
カツン、カツンという音で、意識を呼び起こされた。
蛮はぼんやりとした意識で、自分が銀次におぶさっている事に気付いた。
(そっかぁ‥‥、ゆらゆらしてたのは、このせいかぁ‥)
蛮の意識を起こしたのは、階段を上がる銀次の足音だ。
けれど、どこか非現実的な感覚と綯い交ぜになったままの蛮には、今何処にいるのか、とか、何処に向っているのか、というような事は意識の表面にのぼらない。
「蛮ちゃん、起きて。お家に着いたよ」
銀次が声をかけながら、背負った蛮を大きく揺する。
その動きははっきりと覚醒を促すもので、ぼんやりとしていた蛮の意識は、漸くはっきりとしてきったのだった。
「ん、ああ、起きて、る」
銀次の背から降りて、何とか自分の足で立って、よろけながらも部屋の中に入った。
「疲れたよね? お風呂の用意しちゃうから、横になってていいよ? 寝ちゃっても起こしてあげるから」
「ん、分かった」
蛮は素直に畳の上にごろりと寝そべった。
かなり無茶な抱き方をされた身体には、疲労が重く圧し掛かってきていた。帰ってくるまでの間の短い睡眠くらいでは到底解消されはしない。
その所為もあって蛮は横になると直ぐに眠ってしまっていた。
疲労が色濃く残る、蛮の寝顔。
目は落ち窪んでいて、下にははっきりとクマが浮んでいる。そんな彼の顔を見ていて、銀次は自分の中にある「独占欲」が更に大きくなるのを感じていた。
(このまま、何処かへ閉じ込めてしまいたいよ。‥‥‥蛮ちゃん‥)
ホンの少しでも、他の人になんて見せたくない。
その笑顔も、その姿も。
髪の毛一筋だって、見せたくない。
何処かへ隠してしまいたい。
そんな銀次の欲望、願望が、毎日蛮に無理を強いる。
優しいから。蛮ちゃんは優しいから、そんなオレの気持ちも分かっていて、知らないフリすらしてくれる。
そうして、惜しげもなく与えてくれる。
それが、オレの中に降り積もるなどとは思ってもいないのだろう。
いつか‥‥‥‥
彼を何処かへ閉じ込めてしまう日が来る。
その刻が『何時』とは明確には出来ないけれど───
きっと、間違いなく。
いつか、その刻はやってくるのだ。
終り
コメント:ハイ、裏第2作品は、テーマ「黒銀次」でした。いかがでしょう? 少しは黒くなったかな?
なんせウチの銀次は真っ白な性格のが多い所為か、黒くならない(汗)一生懸命黒く黒く、と頭の中で唸りながら書きましたよ。メモではもっと銀次は白かった。こっちのが黒いよね、と一部変えたらもうなかなか進まない(泣)
そういえば、誕生日占いなるもので、銀次を見ますと、彼は活動宮の火の宮。守護は魔術師。短所、独占欲が強いこと。長所、変化を好む為、状況に応じる適応力が高いこと。
で、蛮ちゃん。彼は活動宮の水の宮。守護は皇帝。短所、プライドが高く、間違いを認められないこと。他人の長所を素直に認められないこと。長所、現実的で、計画性がある。夢を実現させる為の行動力が高い。見たときには馬鹿笑いしちゃいましたよ。嵌り過ぎ!そんな占いから妄想したお話でした。ここまで読んだ方、ありがとうございます。(焔)
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