昨日までと何ら変わる事のない、ある日のホンキートンク。

バイトの看板娘達も店に顔を出す賑やかな午後に、それは届いた。


「マスター。マリーアさんから小包が届いてますよ。」


茶色の大して大きくはない段ボール箱は、宛先の住所や伝票もなく、一体どうやって届けられたのか、ただ、箱の片隅にマリーアのサインと、赤字で『取扱注意、生ものあり』と書いてあるだけだった。


「何か送るとは聞いてなかったが…」

「マスター開けちゃっていいですかぁ?」

「構わんが、注意してくれよ?」


これが奪還屋の二人に宛てたものなら間違いなく二人に開けさせはしないが、店に届けられたのなら大丈夫であろう。

夏実は、貼ってあるガムテープを慎重に剥がした。


「何が入ってるんでしょうね。先輩。」


レナも興味深げに覗き込む。

ガムテープが全て剥がれ、段ボールのフタがふわりと浮いた途端…


「はーはー。死ぬかと思ったぁ。」

「ったく。あんのババアはろくな事しやしねー。」


飛び出すように現れたのは、紛れも無く生もの。

但し、人形サイズになった奪還屋の二人という、予想すら出来ないものであった。



『この子達は、私の大事にしてたアンティークドールを壊してしまったイケナイ子です。

24時間は元には戻れない強力な魔法をかけてあるので、たーっぷり可愛がってあげてね。マリーアより』



同封されていた手紙には、そんな事が書いてあった。

それを読み上げた後、波児は改めて二人を見ては、大仰な程のため息を吐いた。


「彼女の怒りを買うたぁ、やってくれるな。お二人さん。」

「だいたい、蛮ちゃんが俺を突き飛ばしたりするから。」

「俺のせいだってのか?勝手に盛って、襲ってくっから、俺は貞操を守ろうと…」

「おいおい。二人の前だぞ?」


話が思わぬ方向に流れていきそうな所を、波児が割って入った。聞かれてはいなかったかと夏実とレナを見て、波児は言葉を失った。

夢の世界を見つめているような、瞳に幾つもの星を飛ばした眼差しは、真っ直ぐに銀次と蛮に注がれている。


「な、夏実ちゃん?レナちゃん?」


波児の呼びかけさえ、まるで聞こえていない。

胸の前で祈るように手を組み、自分達を見つめてくる二人に、銀次も蛮も嫌な予感を抱かずにはいられなかった。


「私…、こういうの夢だったんです。」

「私もです。こんな、生きてるみたいな人形…」

「あ、あのね。レナちゃん。小さいけど、俺達一応、人形じゃなくて人間だから。」


そう銀次は説明するが、もはや自分達の世界に入り込んでしまった二人には、聞こえるはずもない。


「リコちゃんハウス、まだ押入れにあったよね。取りに行かなくちゃ。」

「私も荷物の中に人形の服と小物があったはず!」

「それから、裁縫道具もいるよねー。」

「楽しくなりそうですね。先輩!」

「そうだね。レナちゃん。」


二人はきゃっきゃっと、はしゃいだ後で風のように散って行った。


「なんか、マリーアがここに俺らを送ったわけがわかった気ぃする…」

「俺も…」


重い口を蛮が開けば、銀次もコクンと頷いた。


こんな状態の二人を見て、夏実とレナが騒ぎ立てるのは、火を見るより明らかだ。

ようは、壊した人形の立場になって反省しろという、マリーアからのメッセージがイヤという程、伝わってくる。

二人は、ここに来てようやく、マリーアを敵に回した事を後悔した。


「やっぱり、蛮さんには赤よね!」

「先輩!こっちの黒のキャミソールワンピもいいと思いませんか?」

「いい!スッゴク可愛いよ。レナちゃん!じゃあ、この服を撮ったら、次はそれね。」

「銀次さんは、これお願いしますね。」


Tシャツにチノパン、そこにジャケットを羽織った出で立ちをしていた銀次に、おとぎ話の王子様のような衣装が渡される。

これで何回目の着替えだろう…、心の中で呟いてから銀次はそれを手に取った。

もはや、二人には拒否権などない。


「どうでもいいけど、何でさっきから、俺の服は女もんなんだよ!」


ささやかな抵抗とばかりに、蛮は抗議するが、少女達は可憐な笑顔を向けると、きっぱりと言い切った。


「だって、蛮さんに似合うんだから仕方ないじゃないですか。」

「うん。言えてる…」


呟いた銀次は、うっとりとした表情で蛮を見つめた。

肩と背中を大胆に開いた深紅のドレスは、確かに蛮の妖艶な魅力によく合っている。

ファスナーの代わりにマジックテープが使われてはいるが、デザインも見た目も思った以上によく出来ていて、たかが人形の服と馬鹿にしたものではない。下着まで渡された時は二人とも驚いたものだ。


「言えてるじゃねぇよ!てめぇは、男もんだからって、いい気になりやがって!」

「いたたたっ。ご、ごめんなさい〜!!」


八つ当たりとばかりに、こめかみに拳がグリグリと捻り込まれた。

そんな二人の首根っこを、まるで子猫でも掴むように夏美は摘み上げて引き離す。


「二人とも痴話喧嘩は後でやって下さいね!時間は限られてるんですから、撮れるだけ撮らなくちゃ!お願いしますね?お二人さんvv」


「「………はい。」」


絶対無敵の笑顔を振りまかれ、二人は本当に子猫のように項垂れるしかなかった。

王子姿の銀次とドレス姿の蛮を、夏美が用意した城のセットで撮影。人形には出来なかった細やかなポーズをしてもらえると、二人は実に楽しそうだ。当の銀次と蛮は、半ばやけくそに注文に応えていく。


そうして、夏美達が用意した衣裳を全部着せられ、撮影が終了した頃は、真夜中近くなっていた。

撮影の合間に、夢でしか見た事もないような巨大(実際は普通サイズ)の料理を食べられたとはいえ、二人はすっかりヘトヘトに疲れ果てていた。


「銀ちゃんも蛮さんもお疲れ様ですvこれで、ゆっくり休んでくださいねvv」


仮の住居として、夏美が用意したのは、人形の家。

けれど、改良して眠れるようにしたベッドも置かれ、プラスチックの浴槽には、牛乳をブレンドした『牛乳風呂』まで用意されていた。


「『牛乳風呂』だって、何かおいしそーな匂いv」

「頼むから飲むなよなぁ。」


ミルクパンで温められたとは思えないお湯が、疲れた体にじんわりと染みていくようだった。


「明日のお昼までは、この格好だからなぁ。絶対、朝イチで起こされるぞ?」

「ははは。だよね〜。何で、女の子ってあんなに人形が好きなんだろ?」


ふうっと溜息を吐き出して、浴槽の縁にうつ伏せになっている蛮をそっと盗み見た。昼間からずっと抑え込んでいた感情が、沸々と湧きだしてくるのがわかる。


「ねぇ…。蛮ちゃん。」


そっと近寄って、お湯から出た白い肩に唇を寄せる。


「いっとくけど、シねぇからな?着せ替えで疲れてんだからよ!」

「だめ?だって、女装の蛮ちゃんずっと見せられて、これでも俺、我慢してたんだよ。」


白いお湯の中を泳いで、銀次の手が蛮の突起を探り当てた。

キュッと摘むと、腰が揺らいで、水面が波立つ。項に顔を埋めて、そこを更に揉んでいけば、蛮も黙ってはいられない。


「ふっ……あっ…ちょっ……ぎん、じぃ」


甘い声に気を良くした銀次は、揉む手を休める事なく、空いた手を秘部へと滑らせた。

お湯の温かさでやや柔らかくなったそこに、人差し指を割り込ませる。指の侵入と同時にお湯も入り込み、その温もりに腰がぶるっと震えた。


「ふぁっ……あぁ……、んっ……ぁ……」


縁取りをなぞるように、指が円を描き、解れてくると、指を根元まで埋め込む。埋め込んだ指が腸壁を引っ掻きながら、前後に出入りを繰り返すと、一層、お湯が体内を侵食していった。


「んぁ……はっ、ん………あぁ、はっ………あんっ…」


ローションとも違う、腸壁の中で揺れる液体が、堪らない感触で暴れてる。体の中に海を取り込んだような気分だ


「蛮ちゃん。ごめん…。もう、待てそうもないや。」


三本に指を増やして、散々中を掻き回していたが、締め上げるナカの心地よさに、昼間で使い果たしていた我慢はとうに、限界を迎えていた。

挿入させるには、まだキツさの残る入口に、溢れる熱さがグッと押し付けられる。そうして、再び入り込んだお湯とそれ以上の熱い塊が、蛮の内部を貫いた。


「ひぃ……いっ、……ンンっ……あぁ、あっ…」


ばしゃばしゃとお湯が大きく跳ね上がった。

背後から揺さぶってやれば、大きな波がいくつも出来上がり、浴槽の縁に当たっては、外へと溢れる。

寄せて引く波の感触が肌を撫で、銀次にばかりでなく、お湯にさえ揺さぶられているようで、その奇妙な感覚に目眩を起こしそうだった。


「はぁ、あっ……あんっ……あっ……ぁ……っ」

「蛮ちゃん…、なんか、凄い熱いよ。」


お湯の熱さと蛮のウチの熱さが、銀次を煽る。

揺らめく波に、腰の動きさえ煽られているようで、銀次もまた、夢中で腰を揺すった。

もはや、自分たちが人形のように小さくなってしまった現実など失念してしまってる。そこにあるのは、愛しい者と一つになっているという、幸福な気持ちだけ…。


「蛮ちゃ……。もう、イくよっ」

「あぁ……銀次ぃ、ぎんっ……あ、あ、ぁ……」


奥で受け止めた熱さは、お湯だったんだろうか?銀次の体液だったんだろうか?

ぼんやりとする頭で、蛮はそんな風に思った。


「げっ。蛮ちゃん。どうしよう、これ…」

「んー……。って、なんじゃこりゃ。」


幸福な微睡みに酔いたかった蛮だが、銀次の声に現実に返れば、それは悲惨な風景が飛び込んできた。

溢れ出たお湯は、仕切のない人形の家を水浸しにしていたのだ。


「まぁ…片付けるしかない、な……。」

「うん。どうだね。」


とりあえず、二人は、このお風呂が『牛乳風呂』で良かったと、つくづく思ったのだった。

明け方までかかった作業が終わり、辛うじて無事だったベッドに二人で転がり込んだ時には、瞼が半分以上垂れ下がっていた。


「夏美ちゃん達、何時頃来るだろ…。」

「そんなの考えてるより、寝るぞ?もう……」

「うん。おやすみ。蛮ちゃん。」

「おう……。」


柔らかなベッド、隣りには愛しい人……

疲れた体に降り掛かる優しい睡魔に、二人は身を委ねた。



「「おっはよーございます!二人とも起きてますかぁ」」



早朝の爽やかな空気を打ち破る、夏美とレナの元気いっぱいの声に、二人は帰りたくもない現実に返る事になった。

穏やかな睡眠は、僅か数時間のうちに破られた事になる。




−−もう、人形なんてこりごりだぁ!!



銀次と蛮は心からそう思った。







【あとがき】

初代キリ番ハンター、神成様!83000HITおめでとうございますVV

リクエストが、『GBの二人ともが10cmになってしまい、夏実、レナの二人に遊ばれる』というものでしたので、二人には思いっ切り遊んで頂きました!

それだけではつまらないので、お風呂プレーも付けました(笑)ちなみに『牛乳風呂』は、某しずかちゃんがスモールライトで小さくなって入ってたのを参考にしました(笑)


お気に召して下されば幸いです。リクエストありがとうございました




コメント

ホント、散々に遊ばれてますねぇ。でもその場に居たら、焔も参加するんだろうな(笑)

マリーアさんのお仕置きにはきっと寝られないってのも含まれていたのでは? と思われます(笑)

二人は思いっきり反省したことでしょうね。(あ、でも銀次は懲りてない気がするんですが? 如何なもんでしょうか?)

goto様、毎回予想以上の作品をありがとうございます。


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