言の葉の鎖








「馬並のナニで仕事取ってる奴に、デカい口叩かれたくねぇなぁ。」

「自分が仕事ないからってひがむなよ。女々しいな、ヘビ野郎。」

「…んだと!」

「やるなら、相手になるぜ?」


蛮の喧嘩腰の口調に、士度が食ってかかり、ホンキートンク内に険悪なムードが漂う。


「お二人共、喧嘩はよくないですよぉ。」

「おいおい。喧嘩は店の外でやってくれよ。」


店主とアルバイターが困ったように二人を見た。


よくある些細な喧嘩。

ごく普通の日常。



けれど……



「二人共、何やってんの?仲良くしなきゃ駄目じゃない。」


口元に笑顔を浮かべて、店内に入ってきたのは銀次だった。


「銀次。お前、マクベスの所へ行ったんじゃなかったのか?」

「そうだったんだけどね。士度。早く片付いちゃって。」


士度に向けられていた柔和な笑みが、蛮を見た。

途端、蛮の体に緊張が走る。掌がじっとりと汗ばみ、知らず表情が固くなった。

だが、それも銀次にしか判らぬ程度だったけれど。


「蛮ちゃん。もう、アパート帰ろうか?」


言われた瞬間、蛮の背筋から汗が一気に吹き出した。


「えー。もう、帰っちゃうんですか?銀ちゃん。もうすぐ、ランチも始まりますよ?」

「ごめんね。夏実ちゃん。また、今度ね。」


強張って立ち尽くしている蛮の手を、銀次は握って外へと促した。


「さぁ。帰ろう。」


その笑顔があまりにも完璧で、完璧過ぎたが故に、蛮にとって何よりも恐ろしく映った。






「ひぃ……ア、ぁ…あっ……はっ…」

「蛮ちゃん。なんでお仕置きされてるか、わかってるよね?」


汗で張り付いた蛮の前髪を払ってやりながら、問う。


「…猿ま、わしに…ぁ……話しか…っ…けた、から……」

「そう。俺以外の人間に話しかけるのも、触らせるのもダメだって言ったのに。」


銀次はそう言って、持っていたリモコンのスイッチを『強』へと変えた。


「やあ、ぁ…あぁ……ひっ、いっ…あ、あぁ」


ロープに繋がれた四肢が突っ張り、喉も背中も反り返った。

蛮の中央を貫いて犯しているのは、無機質な玩具だ。

固定した台に男性器を模したモノが付けられ、スイッチを入れると付いているモノが回転しながらピストン運動をする仕組みになっていた。

手足を拘束された蛮は、この玩具を設置され、無人のまま半日放置され、犯され続けた。

絶え間なく快楽に攻め立てられ、蛮の意識は朦朧としていた。秘部は赤く腫れている。




誰の目にも触れさせたくない…


誰とも口を聞かせたくない…


誰にも触らせたくない…



見ていいのは俺だけ、

話していいのは俺だけ、

触れていいのは俺だけ、



この焦がれるような衝動はなんだろう?



酷く歪んだ独占欲。



「蛮ちゃんは、俺のものだよ。」


玩具のスイッチを切り、手足の戒めを取る。すっかり腰を抜かした蛮は、立つ事も出来なくなっていた。

床に崩れている蛮に覆い被さり、銀次は猛った己を貫いた。


「あっ……はっ、ン……あぁ…ァ……あっ…」


力のない手足は、腰の突き入れに合わせ、ゆらゆらと人形のように揺れた。

銀次は、殊更緩やかに腰を動かした。蛮の官能を広い上げ、頂点を目指して優しく揺する。

無機質な突き上げに半日も耐えていた体は、それだけで身震いする程、歓喜していた。


「蛮ちゃんは俺のもの。俺だけの蛮ちゃん。」


銀次は何度も何度も繰り返した。

甘く果実を食みながら、緩やかに契を穿ちながら、蛮の心だけでなく、体にも刻みつけるように。何度も何度も…。



やがて、言葉が鎖の輪となり、連なって、蛮の心に重く絡み付く。

がんじがらめに縛られて…



「あっ……お、れは…ぁ……銀次の…も、の……」



ほら、もう動けない。




蛮の答に、銀次は満足そうに口元を歪めると、青白いその顔に笑みを落とした。




だけどね。蛮ちゃん。


俺はただ、

蛮ちゃんを愛しているだけなんだよ?







【あとがき】

皆様の愛のお陰で、9万打というサイト開設当時には夢にも見ていなかった数字を達成出来ました。本当に、ありがとうございます。

アンケートで1位だったお題をフリー用に加筆修正致しました。見た目は白、中身は真っ黒という銀次のお話です。



【コメント】

9万打おめでとうございます。焔が投票したのは別の御題なんですが。

フリーでしたので頂いてきました。銀次が黒い。流石、goto様です。師匠です!焔も御題を頑張らねば。

同じ御題なんですよね。(雪だるまが書きたかったもので)

とはいえ、もうすぐ10万打なんですよね、早いなぁ。ますます、頑張ってください。



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