Fresh Kids ! 1
事件の始まりは… 良く晴れた、暑い日だった。 まだ、初夏の頃とはいえすでに日差しは夏のようで、照りつける熱は、むき出しの肌を夏らしく染めていく。 そんな夏日の街角で、元気良く薄着のキャンペーンガール達が手に提げた籐の籠から商品の試供品を街行く人々に配っている。受け取る人々は本当に、さまざまで、サラリーマンやフリーター、大学生らしき人々、はては主婦らしき人達。 「眠気すっきり、キャンディーです。いかがですか? 新商品のお試し、キャンペーンでーす」 「カフェインが多く含まれていますので、15歳未満の方にはお配りできません」 「よろしかったら、いかがですかー」 彼女達は口々に声高に叫び、人々の注意をひいている。そして、立ち止まった人々に小さな小袋入りの品を手渡している。 「はい、お連れの方にもどうぞ」 そう言われ手に押し付けられたものを銀次は反射的に受け取っていた。手渡してきたキャンペーンガールがいかにもスレていなさそうな感じの女性だったから銀次にしてみれば受け取らないわけにはいかない。彼は、愛の戦士なのだから。 「ありがとう。暑いのにご苦労様」 お礼を言って笑うと、彼女もにこやかに笑み返してくれた。 つかつかと立ち止まることなく歩き去っていく蛮を追いかけて、銀次は走り出した。
ホンキートンクのカウンターにひじを着いて蛮は大きなあくびをした。 「なんだ? 蛮。随分眠そうじゃないか」 「ああ、どっかの馬鹿が寝ぼけて噛み付くモンでよ。寝てねぇんだ」 そう言って再び大あくびをする。その横に座ったまま、銀次は小さく成るしかなかった。覚えは全く無いが、今までにも何度かあったらしいから、今回の犯人も自分に違いないのだ。 「だからよぉ。コーヒーくれ」 「ツケはいつ返してくれるんだ?」 苦笑しながら、波児は言った。もっとも、彼等を見れば言うお決まりの台詞になりつつある。 「そのうち、倍にして返してやるって」 蛮の返事もいつものものだった。 「あ、蛮ちゃん。眠け覚ましならこれは? さっき貰ったんだ」 「へ? 何?」 蛮は銀次の方へと顔を向けた。眠気で頭がちゃんと働いていない。小さな声だった銀次の言った事は蛮の意識には届いていなかった。 「ううん。なんでもいいよ。はい、口あけて?」 ついつい考えず、銀次に言われたとおりにぽかんと口を開けてしまっていた。 その中に何か丸い物体が、ぽん、と投げ込まれた。同じものを銀次も自分の口にも投げ込んだ。 「あ、スーッとする。不思議な感じの味だね」 にこっと笑って蛮を見れば、彼は渋い顔をしていた。 「ったく、変なもん食わすなよ」 そのときはそれで終わった。いつもの二人で、何か変わったところなど全く無かった。相変わらずな彼らに波児の苦笑もいつものごとくで。 しかし、この後に起こる事件は誰も予想なんてしていなかった。
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