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「今から此処とその場所を繋げた通路を作るけど、それは片道通行なの。そうじゃないと、蛮の魂を奪った奴らに此処がわかってしまう。そうすれば、彼らは必ず身体も奪おうとするわ」 「そっか。そいつらは蛮ちゃん自身が目当てなんだ」 そう言えばマリーアさんは頷いた。 「だからね、銀ちゃんが通路を抜けたら閉じてしまうの。でも、それじゃ帰ってこれないでしょうから、これを持って行って。蛮の魂を奪り還え、したらこれを地面に、土のところに投げつけて、そうすれば、一分間だけ、此処と繋がる通路が出来るわ。いい? 一分間だけよ?」 マリーアさんの言葉にオレは頷いて返した。 そして、マリーアさんが差し出した小さな水晶のようなモノを受け取った。それを失くさないように、上着の胸ポケットの入れた。 「それで、奪還する蛮ちゃんの魂ってどんなものなの?」 これがわからなければ探しようが無い。もしわからないと言われたら探すだけでどれだけの時間がかかるんだろうか。 大体、形を言われたとして、オレに区別が付くようなものなんだろうか。 マリーアさんは「そうねぇ」といって思い出すように顎に指をあてた。 「魂の姿はその人の本質で守護の影響を受けたモノね。それが小さな妖精のような姿をしているはずよ。そして、恐らくだけど、呪を編みこんだ籠のようなものに捕らえている筈。ただ、奴らは蛮以外の人の魂も盗んでいるみたいなの。だから、彼らも出来るだけ逃がしてあげて。でも、蛮の魂は此処につれて来て貰わないと、ね? 蛮の魂を見分けるのは、貴方しか出来ないと思うから」 再び頷いた。 「うん。絶対に奪り還えして連れて帰ってくるよ」 「お願い。気をつけて‥」 「任せて! 行ってきます」
そのやり取りを交わして、マリーアさんが歪めた空間の通路を走りぬけ、辿りついたのが、今居るこの場所だった。
目の前には、いかにも怪しげな古い洋館。 他は森なのか木々しか視界には入らない。ということは、あそこに蛮ちゃんの魂を奪った奴らが居るのだろう。そして、奪われた蛮ちゃんの魂も。 オレは、気配を出来る限り消して、ゆっくりと洋館に近づいた。盗んだ奴らに見つかってしまってはもともこも無い。 この場所から移動されてしまったら、また探すのにマリーアさんが苦労するのだろう。だからこそ、数少ないだろうチャンスを見逃さないようにしなくっちゃ。
普段の仕事のときに、蛮ちゃんから注意される事を、頭の中で繰り返し繰り返し確認する。 周囲の気配に気を配る。 自分の居る位置の把握。 一点じゃなく全体を見て、それから全体の気配を把握。 難しいことも多いけど、そうしていると今此処に蛮ちゃんが居てくれるようで心強い。
蛮ちゃん! 待っててね。いま助けに行くからね。
ネクスト→
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