名前を呼んで 05

中はいやにガランとした部屋だった。

飛び込んだ勢いを上手く殺せなくて床を転がってしまったけれど、何も無かったお陰で、大きな音を立てることも無く、結果OKってところだ。

でも、この部屋、何に使うんだろう?

床に積もった埃が少なかったから、此処に潜んでいる奴らが何かの目的があってこの部屋を掃除してあけたんだろう。

家具など何も無い部屋は、薄暗さとあいまってあまりいい感じは受けない。


取り敢えず、そんなことを詮索に来たわけじゃないから、頭から追い出しといて、下の部屋に向かう方法を考える。

目の前にあるドアに近づいて外の気配を伺えば、人の気配は下の階ばかりだ。

と、部屋の奥のほうからぴぃぴぃと小鳥が鳴くような声がかすかに聞き取れた。

「? 何だろう?」

何も無い部屋のはずなのに、と不審に思い声の発生源を探った。

声は奥の壁の中から漏れてきているようだった。

指で擦ると、その壁は古いレンガで出来ている事がわかった。もっと力を入れて擦ると、漆喰が剥がれ落ちてレンガが緩んだ。

声は途端に大きく聞こえるようになったから、此処から聞こえてくるんだろう。

レンガをそのまま数個抜き出して、頭が入るくらいの穴を開けて中をうかがった。

真っ暗な穴が上下に延びていった。大きさは人一人くらいなら通れそうなほどで。

「これ、ひょっとして、暖炉とか言う奴?」

クリスマスのサンタのイラストには付き物の、レンガの暖炉。

「ってことは、これを使えば直ぐ下の部屋に行けるって事じゃん。オレってラッキー」

オレはせっせとレンガを外し、開けた穴を大きくした。

人の気配を慎重に伺えば、殆ど移動していない。

それを確認してから、オレは開けた穴に足から潜り込んで、下へと落ちていった。







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