![]() ドアの外は薄暗い廊下だった。さっきの男達は既に上に行ってしまったのだろう。気配は近くには無い。 建物全体の気配を探れば、上の階に3つあった。これがさっきの男達だろう。 それ以外に、離れたところに2つと3つ。 少なくとも、オレにわかる範囲内に少なくとも8人の人間が居るということだ。
そろりそろりと気配を探りつつ、廊下を進み、突き当りのドアをそっと押した。鍵は掛かってなくて、軽く開いたそこからすばやく出ると、目の前にあった大きな壷の影に身を潜ませた。 今出てきたドアを振り返って見れば、それは一枚の大きな絵で予想通り隠し部屋になっていた。 「良かった、こっちから入る事にならなくて。これじゃ、オレには直ぐ見つけられなかったよ」 ほっとして呟くと、蛮ちゃんがまたつんつんと髪を引いた。 指差す方向を見れば下へ向かう階段がある。 「地下?」 そう聞くと首は横に振られた。 「地下じゃないけど、あそこから下に行くんだね?」 今度は縦。 近くの気配に気をつけながら、すばやく階段を下りた。 下りきった先はさっきの隠し通路のような廊下だった。どうやらどこかと地下の通路で繋がっているらしい。 通路には人の気配は無い。けれど、途中にはドアや身を隠せるような場所は何も無い。 こんなところを移動中に見つかれば、隠れようが無いし、逃げようも無い。 オレは慎重に周囲の気配を探った。 近くやこちらに近づいてくるような気配は無い。 意を決して、足音を極力立てないようにして、一気に通路を突っ切った。 向かった先も階段で上に上がっている。そっと頭を出して伺えば、目の前には大きな部屋があった。 どこかの研究施設みたいに大きな機械や機材が所狭しと並んでいる。それに大きな水槽みたいなガラスもいくつもあった。 気配はそこに3つあった。 「あれ?」 よくよく探れば、かすかな気配がもう一つある。かすか過ぎて遠くからじゃわからなかったみたいだ。 でも、この気配‥‥‥。何か知っているような感じがするんだけど。 何か嫌な予感がして仕方が無い。
そろそろと室内に気配を消して侵入した。 人が居るのはもっと奥だ。こういう時、大きな機械とかがたくさんあるとこは楽だ。隠れる場所が多いし、機械の立てる音もあるから慣れた人間じゃなきゃ気配なんて悟られにくい。 そうして奥に進めば、白衣を着た人の背中が見えた。 白衣の人は2人。なんかどこかの民族衣装みたいなのを着た人が1人。 そして、その奥に椅子に座った人物が居た。 虚ろに開いた目。蒼白い肌。黒いざんばらな髪。 服も着ずに椅子に座るその人物は‥ (ば、蛮ちゃん?) そう、紛れも無く蛮ちゃんだった。
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