名前を呼んで 11

窓の無いこの部屋から見れば、明るいのは出口だけ。

そっちに向かって全力で走りながら体勢を低くする。なんせ、蛮ちゃんがいるから電撃は使えない。

だから、自分の身体自体を武器にすることにしたんだ。走ってきた勢いのまま思いっきり体当たりを掛ける。

民族衣装みたいなのを着た男は、のけぞるように吹き飛んだ。

あとは白衣の男2人。彼らのほうを向けば、2人とも唖然としている。ラッキー!

その隙を付いて、2人とも殴り飛ばして通路の階段に飛び込んだ。

そこを一息に駆け抜け、階段を飛び上がり、その勢いで前に立ちふさがりかけてきた男2人を弾き飛ばす。

オレは止まる事無くドアにまで体当たりして、館の外へ。

兎に角地面が土なら、マリーアさんから貰ったアイテムが使えるはずだから。

尤も、今の状況じゃ使って移動しても、通路が閉じる前に追ってこられそうだ。

どうにかして時間を稼がなきゃ!

でも、止まって考えたりする時間も無い。オレは森の中に入り込み、必死に走った。

兎に角、建物から遠く離れること!

それしか浮かばなかった。




必死に走って、駆け抜けた先、突然地面が消えた。

「ウソっ!」

勢いのまま宙を泳いだ身体は重力にしたがって一気に下へと、加速して落ちてゆく。

「うああっ‥!」

建物の高さにしたら3,4階分をすべる様に落下して、最後は転げて止まった。

突き出ていた岩や生えている木々で、あちこちぶつけたらしく鈍い痛みが身体のあちこちからしてきて、意識がかすんでいく。

(‥こんな、ところで‥気を、失ったら‥‥‥)

がけの上から追ってきた男達の声が聞こえた気がした。

けれど、オレの意識はそのまま闇の中に飲まれてしまった。




ネクスト



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