![]() 「いだっ! な、何?」 急に感じた痛みにオレは目を覚ました。痛みの発生源である鼻を押さえれば、少し血が滲んでいた。 「ぴぃっ、ぴっぴっぴぴっ」 「あ、オレ気を失ってたんだ。ありがと、起こしてくれたんだ」 オレは身体をずらして窪んだ穴から這い出した。 「こんな穴に入り込んだっけ?」 そう考えて、はっとした。 崖から落ちたらしい跡から何か引きずった跡が穴まで続いている。これは自分で移動した感じじゃない。 だからって追ってきた奴らがわざわざそんなことをするはずが無い。 という事は、残る可能性は1つしかない。 オレは肩に疲れてぐったりと懐く蛮ちゃんを見た。 「重かったよね? ありがとう、蛮ちゃん」 「ぴうっ‥」 蛮ちゃんは小鳥の鳴き声のような声で返事を返してきた。その声を聞いてオレはあれ?っと思ったんだ。 (暖炉のことを、気づかせてくれた声にそっくりだよね? アレって、オレが来たことに気がついて呼んでくれてたの? オレが迷わない様に‥) オレが蛮ちゃんを助けた時には、ずっと蛮ちゃんは黙っていた。 それって、オレに呼んでた事がわかるのが照れくさかったから? それとも、叫びすぎて声が嗄れてしまってたとか? ホント、素直じゃないとこはおんなじだね。さすが、蛮ちゃんだ。
といっても、あんまり此処でのんびりしてるわけには行かないんだよね。 「追っ手がどうしたか、知ってる?」 蛮ちゃんにそう聞けば、彼は左右を指差して見せた。 「両方に分かれていったってことか。ってことは下に下りて探しに戻ってくる可能性があるんだよね?」 今度は頷かれた。 奴らが戻ってくるまでにはどれ位の時間の余裕があるだろうか? 「‥‥‥」 オレの決心は早かった。時間を考えて使ってしまうより行動したほうが有効だよね。 マリーアさんから渡されていた水晶をポケットから取り出す。 「蛮ちゃん! 1分間ってわかる?」 そう聞けば当たり前のように頷かれた。 そうだよね、蛮ちゃんの邪眼も1分間だから。 「じゃ、門が開いてから30秒したら教えて!」 此処に来たときの通路の移動時間から考えてオレはそう言った。 幸い此処の地面は硬くても土だった。此処でなら門を明けらる筈だ。此処で、門を開けぎりぎりまで待って通路を抜ける。 そうすれば追ってを少しでも牽制できるし、向こうにある蛮ちゃんの身体やマリーアさんに及ぶ危険が減る。 「じゃ、いい? いくよ!」 オレは地面に向けて、水晶を投げつけた。
ネクスト→
![]()
|