![]() カッと強い光が溢れ、歪んだ虹色の空間が現れる。 当然今の光は追っ手に此処にいるという事実を教えたことだろう。だから、彼らはこちらに向かってくるはずだ。 それがこの門にたどり着くまでに40秒以上あれば、俺たちは逃げ切れる。無かったら、蛮ちゃんを先に通路に行かせて、追っ手をオレが電撃でなぎ払うだけだ。蛮ちゃんがオレの身体に触れて無いんなら思いっきり電撃が使えるから。 相手が怯んでくれればいい。ほんの少しの時間稼ぎで良いんだから。 そう思えば、この崖に落ちた事も悪くない。追っ手との間に時間稼ぎになるんだから。
「あそこだ! 通路が開いてる!」 「どこかへ移動する気だ!」 「逃がすな!」 「王! なぜ民を見捨てるんですか!」 直ぐに追っ手の声が聞こえてきた、。彼らは口々に自分勝手な事を叫んでいた。 そんなこと、オレたち『Get Backder's』には関係ない! 「思ったより近いな。時間は?」 「ぴ、ぴう!」 「時間?」 蛮ちゃんの頷くのを見て、オレは彼を抱えて通路の中に駆け込んだ。そのまま、全力で走る! 来たときには30秒くらい軽く走って着いたんだから、全力なら20秒くらいか? 「待て! 逃がすか!」 「そう言われて、待つような人、居るわけないじゃん」 あと10秒! 出口がもう直ぐ! あと9秒、‥あと8秒‥‥‥、7‥‥‥、6‥‥‥、5 そこでオレはあ通路を抜けた。 途端に周りの虹色の空間がガラスのように砕けて行く。 「ま、まてえ〜」 「王! 我らは、諦めませぬぞ!」 追っ手の声が遠のき、消える。通路は完全に閉じて消えていた。 「はぁ〜、はぁ〜、ぎ、ぎりぎり、セーフ‥」 地べたにへたり込み、そのままごろんと仰向けになった。 「お疲れ様。銀ちゃん」 マリーアさんがそう言ってオレを上から覗き込んできた。 「はぁはぁ、蛮、ちゃん。無事?」 「ぴぃ‥」 蛮ちゃんに声を掛ければそんな返事があって、上着の内側からごそごそと蛮ちゃんが這い出してきた。 「ぴぃぅ‥、ぴぴっ」 「あらまあ、随分可愛らしい姿なのね、蛮」 「ぷっ、ぴっぴっ、ぴぴっ、ぴぅ」 マリーアさんの言葉に拗ねたのか頬を膨らませてそっぽを向く蛮ちゃんに笑みを誘われる。 すっごい、かわいいんですけどぉ。 蛮ちゃんにしてみればそれが気に入らなかったらしく、オレの頬をぺちぺちと叩き出した。 でも、オレの笑いはとまらなかった。 何か安心したら、余計に笑えてきてしまって、止まらないんですが〜。 そんな事、蛮ちゃんに分るわけないか。
オレは暫く笑いつづけた。
ネクスト→
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